BTOパソコンとは、PC of Build To Orderの日本語読みで、受注生産方式により販売されるパソコンを意味しています。受注後の生産となり生産工程に時間を要するため、電話やFAX、現代的にはインターネット通販による注文が主流となっています。
BTOパソコンの特徴
BTOパソコンは、標準構成と呼ばれる、メーカー側で構成した基本仕様がありますが、その仕様を変更して注文主の要望に合わせたパーツのカスタマイズが可能な点が完成品とは違う大きな特徴です。
このような部品変更はパーツのカスタマイズと称され、パソコンの性能を細部にわたり注文主である顧客が変更可能となっています。
受注生産なので納期を要する
BTOによる注文主の要望に応えるため、BTOメーカー側はパソコンを完成品として在庫していないので、受注後にパーツを組み込み生産し、完成後に検査をして発送する流れとなり、家電量販店やパソコン専門店の店頭で購入し持ち帰るような買い方は通常できません。
納期は指定パーツにより変化し、最短で翌営業日発送、国内BTOメーカーの多くは3~7営業日での発送を目安です。例外的にBTOパソコンメーカーでもBTOではない、即納や完成品モデルもあり当日出荷されるものもあります。
流動性があり費用対効果に優れる
BTOメーカーは、一部を除き完成品のパソコンを販売していないため、常に部品単位でストックしており、流動性に優れているため、パソコン本体の価格をパーツ単品レベルでの市場流通価格を維持できます。
多機種ある製品に対して1つのPCパーツを流用できる点で不良在庫や保守在庫となる部品の種類が減り、1種類のパーツを多機種のパソコンで分散して使用できるため、バルク品やOEMでの大量仕入によりコストが大きく削減されています。
完成品PCのデッドストックがない
完成品パソコンの場合、店頭などへ出荷した後に売れ残りとなった際は在庫処分などと称して大幅に値下げし販売されることがありますが、BTOパソコンは基本的に部品単位の在庫であり、完成品として在庫はしていないため、パソコンとしての完成品を薄利や赤字で在庫処分する必要がありません。
そのため、完成品よりも全体的にコストパフォーマンスの良い、在庫処分による赤字負担などの引当金を考慮しなくてよい製品となるため、比較的安価なパソコンとしての販売が可能となっています。
広告宣伝が少なく製品価格に反映
BTOメーカーによるBTOパソコンはホワイトボックスとも呼ばれていた時期があり、ブランディングに力を入れない方針のメーカーが多々あります。そのため、パソコンの価格を極限まで抑えており、粗利率は20%未満、メーカーや製品により10%未満のパソコンも珍しくありません。
なぜ広告費に予算を取らないかは、例えばテレビCMなどメディアでの大規模な宣伝をするほどの予算規模がなく、その予算を内部留保として競合するBTOメーカーとの価格競争にあてています。
国内大手PCメーカーは、広告宣伝費、高額な人件費、在庫価格充当、など多くの費用が商品価格へ反映されていますが、BTOメーカーではそれら3要素のコストを削減するため、BTOメーカー同士での価格競争へとつながり、安くパソコンを販売しています。
カスタマイズの特徴
BTOパソコンの特徴はカスタマイズです。変更できる主なPCパーツの種類と特性を説明します。
OS
OSはOperation Systemの略で、多くのBTOパソコンではOSにWindowsが採用されています。Windowsは大きく分けて2種類あり、HomeとProの2つのエディションが選択できます。
企業向けにはEnterpriseやEmbeddedエディションなどありますが、BTOパソコンは個人と、法人でも単品購入のBTOパソコンの販売が主流なため、基本的にHomeとProの2種類から選ぶことになります。
CPU
パソコンの処理能力の中枢にあたる部品で、主にクロック(動作周波数)、コア数とスレッド数により性能が分かれます。
パソコンの用途によりクロックやコア数の高いCPUをカスタマイズで選択できる場合もありますが、多くの量産系BTOパソコンでは、CPU選択の複雑さを難点としてBTOメーカーが推奨する部品のみとされています。
メインメモリ
CPUが処理した一時的なデータを保存するパーツで、容量が大きいほど一時的に保存できるデータの容量も大きくなり、補助的に処理速度へ影響します。
一時記憶できる容量が大きいほど、CPUの手助けとなる部品がメモリです。メモリはRAM(Random Access Memory)を意味し、パソコンをシャットダウンするとRAMでの一時的な記録は消える不揮発NANDフラッシュがRAMです。
高性能なパソコンほど多くのメモリを搭載可能で、選択できる種類が多い点もBTOパソコンの特徴です。逆に大容量メモリを必要としない低価格パソコンはメモリの最大搭載容量が限られています。
グラフィックスカード
グラフィック機能は、一部のハイエンドCPUを除き通常はCPUに内蔵されていますが、グラフィックカード(グラフィックボード、VGAカード)を搭載するパソコンが、3Dゲームやデザイン用として販売されています。
グラフィックカードの特性により、Dirext Xに適したゲーム用、Open GLに適したデザイン用、より美しい描画を求めたり処理速度を求めたハイエンド製品があり、BTOパソコンではカスタマイズでグラフィックカードを変更できるモデルがあります。
ストレージ
ストレージとは記録用ドライブ、装置を指す名前で、主には、ハードディスク・ドライブ(HDD)や、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の総称です。
BTOパソコンではHDDとSSDの違いの他、容量や性能の幅広いカスタマイズが可能な機種が多く、1ストレージ構成ではない、2ストレージ以上の搭載も可能なパソコンもあります。
光学ドライブ
光学ドライブとは、古くはCDドライブ、次いでDVDドライブ、そしてBD(Blue-rayドライブ)の総称で、2015年頃からのノートPCをウルトラブックと称した薄型化にともない、デスクトップPCでも標準構成に含まれないモデルが増えています。
標準でDVDスーパーマルチドライブを搭載できるパソコンの多くは、BDへのカスタマイズが可能なことが多い反面、光学ドライブ非搭載のカスタマイズもできるところが近年のBTOパソコンの特徴です。
マザーボード
BTOパソコンのマザーボードは基本的にカスタマイズ不可、変更はできません。理由はその必要がなく、BTOパソコンは基本的にマザーボードが文字通りメインの基板(標準構成の基盤)となるためです。
完成品のパソコンを購入するのなら、自作パソコンで遊ぶマニアでなければチップセットの種類やBIOSの機能、改造するための端子の数や搭載できる増設パーツは関係ないことからBTOカスタマイズによるマザーボードの重要性は高くありません。
電源ユニット
BTOパソコンでも電源ユニットの選択が可能なモデルはありますが、量産系BTOメーカーでのカスタマイズ画面では、その多くに意味はありません。
量産系BTOメーカーのカスタマイズでは、電源容量が足りない場合は受注を保留したり、元から電源容量の足りないカスタマイズに入れないよう考慮されているからです。