引き続いて無線LANネタその3。
無線LANルータArcher C7の導入直後に中継機RE450も購入されたAさん宅にて、電波強度を上げるため更にもう1台中継を追加できないかという相談を受けたのだけれども気が進まない。
理由は大きく分けて2つ。
- RE450の多段接続は本当に可能なのか
- 中継追加による電波強度の改善効果に疑問
この2つ。以下、価格コムのクチコミより。
2台買いましたけど普通にできますよ。 2.4 → 5 → 2.4 なんて技もできるので重宝してます。
という事なのでおそらく可能なのでしょう。
多段、古い言い方をするとデイジーチェーン、要するに数珠つなぎによる直列が可能ならば距離はいくらでも延ばせるものの、出来たとしてもどうしても2番が引っかかる。
先にメーカーのサイトで無線の受送信範囲について少々学びましょう。
無線LANの電波は障害物無しなら圧倒的長距離
無線LAN製品も売っているエレコムの解説が分かり易い。
IEEE802.11n規格のルーターを使って実験した人によると「まったく障害物のない状況であれば、直線距離100mくらいなら通信が可能。最大250mでの通信に成功」との報告があります。
やや古い記事なので電波強度が今より弱い当時での話。
直線なら100~250mとは驚き、本当かよと疑い検索し続けてみると個人ブログの記事にて、ベランダに無線LAN親機を吊るしてiPhoneを持ち屋外にて計測したところ250m行けた、もっと行けそうという話がございました。
但し、街路樹などで遮られると長距離の場合は完全に遮断されてしまい途切れるとの事。直線で100mとか試した事が無いので知らなかった。
エレコムの記事の時代より現在は電波強度は高い。
2010年に改正電波法が公布され、この出力上限は従来の10mWから1000mWへと引き上げられました。しかしこの上限は現状では無線LANルーターに適応されておらず、どんなに「ハイパワー」を謳っている無線LANルーターも、日本国内で正規に販売されているものであれば10mWの上限を越えていないはずです。
当時はそうだったのでしょう。
A氏と私がこのたび購入したTP-LINKのArcher C7(公式)は2.4GHzが20dBmなので100mW、5GHzは23dBmなので約200dBmまで向上しております。発信パワーFCC(連邦無線委員会)が何の事か解らないけれど30dBmをW変換すると1,000mW※計算機:dBm<->W 変換
こちらも結構古いけれど、Buffaloによるビル間通信の速度など目安。
source:離れた建物を無線ネットワークでつなぐ | BUFFALO バッファロー
屋外アンテナを使用する事で最大2.5kmもの長距離通信が可能らしい。
しかしここまでは主に屋外であり屋内の話をソフトバンクのページより。
無線LANの電波は、屋内で約25~50m(障害物のない場合の最大)まで届きますが、(中略)特に金属やコンクリート、大理石など電波を通しにくい素材に囲まれた場所では、近距離でも電波が届かない場合があります。
壁の質や厚みによるけれど、私の自宅で20cmくらいの壁を隔てた場合、無線LAN親機からの電波強度は10mも無い割にアンテナ本数が2/3、更に扉1枚挟むと1/3まで下がってしまう。
もう一つ、こちらはau。
無線の電波が届く範囲は、アクセスポイント(親機)と子機間で、一般的に屋外では500m程度、屋内では100m程度と言われます。
おそらくauは障害物無しで100mと説明しているとするならば、壁や扉以外にも屋内には家電製品の影響もあるだろうから減衰するとされているのでしょう。
最も分かり易いと思った、NECの解説ページより。
source:無線LANがどのくらい届くか知りたい! | AtermStation
もう一つのマンションの方はスルーし、木造3階建てでの計測結果となっているので実測なのでしょう。
1Fの隅に無線LAN親機を設置すると、同じ1Fでも2部屋挟むと電波は減衰、2Fのやや離れた部屋でも障害が天井1つなためか1Fの2部屋向こうより電波強め。
3Fまで行くと2.4GHzがギリ、5GHzは2.4GHzより障害物に弱いためか接続不可能という納得の状態へ。
というわけで、いくら飛距離の長い無線LANの電波でも障害物で距離激減、特に5GHzは台無しになってしまう事がお解りかと。
無線の電波強度と速度と範囲の改善策を考える
A氏へ許可をもらい、自宅の断面図風な物を描いた。
本当はもっと複雑かつ奥行きもあるのだけれども、特定されそうなほど特徴的な建物なので意味が変わらない程度にフェイク入れつつ簡略化しております。
まず1Fの親機(C7)が部屋1辺りからテラス~庭までを担当。床の厚みがある割に地下室まで2.4GHzなら何とか電波1/3~2/3で届いており、部屋1の中もそのくらい。庭はどこまで行けども電波3なので途中でやめた。
2Fの中継(RE450)の担当は2Fから上、さすがに屋上は電波1/3か時々切れてしまうものの、部屋6でも3/3~2/3出ております。バルコニーもそのくらい。
C7はFAX電話と一緒に高さ90cmくらいの台の1段下で見えている状態。RE450はビジネスホテルのように廊下の壁へ掛けられております。
C7とRE450との通信状況はやや良好。「やや」とは、距離(電波強度)を示すランプが10秒中3秒ほど時々青から赤になるのでもう少し距離を縮めた方が良い感じ。しかし床へ置くわけにも行かず、リビング2寄りへずらすと3Fの部屋6が厳しくなってしまう。
そこでA氏は上の環境を維持しつつ、部屋4辺りにもう1台RE450を取り付けたいとの事。私が素直に賛同しかねる理由は主に4つ。
部屋1と4と6が強化されるだけは微妙
部屋4の前にもう1台あれば確かに図の左部分は電波が強くなるでしょう。しかし現状でも繋がらないわけでは無いし切れるわけでも無いので増設する効果は薄いと思う。
コンセントが無いので工事が必要
注文住宅なのでAさんがカスタマイズで指定したのかと思うほど2Fの良い位置、廊下の上辺りにコンセントが設置されており、RE450は挿しただけ。しかし現在のRE450から図の左方向の廊下にはコンセントが上に無い。
下に有れども床に近く、おそらく掃除機用だろうからRE450を直付けするともう1つのコンセンを潰してしまい、タコ足などで高さ調整するとジャマ。
工事するのはアホらしいとするならば、部屋4か5の中に追加RE450を設置するのか。やはり微妙だと思う。
SSIDが更に2つも増えてしまう
混乱するであろう最大の心配がSSID問題で、現在でさえC7が2つとRE450の2つ合わせて4つのSSIDがある上、更に2つ増えると6つになってしまう。
SSID統一する手もあるけれど、例として部屋6でも現在のRE450からは切れないので自動的に追加RE450へ繋がるとは思えず、ならば無駄、もしくは手間。
5GHzのみにするわけにも行かず、A氏は良いとしても奥方や子ども達の面倒さを考えるとSSID増殖はおすすめできない。
現状でも充分カバーできている
電波の状況をヒートマップにしてみることに。※参考:アプリ「Wi-Fiミレル」(via:GIGAZINE)
メーター表示すると、C7の正面数cmで80~89くらい。黄色を切り赤になるとアンテナが時々消える感じ。
まずは1F、C7、2.4GHz接続。
画像の下が建物の図の右、画像の右が図の奥。実際には正方形では無く縦長だけれども、四隅は抑えているので何となくイメージ出来るかと。
左下の丸よりやや右にC7が設置されており、玄関まで行くと厳しいもののだいたい建物のF1の3/4は感度良好にカバーしております。緑がアンテナ3、黄色1~2、赤0~1くらい。
同じく1F、C7、5GHzにて。
左の黄色は太い柱の影に隠れてタップしてみた。それでも黄色。
5GHzではなぜか玄関まで緑になっており、2.4と5GHz共通して右上付近に弱いご様子。しかし赤は無いわけで、1Fは全体的にC7で足りているという事に。
続いて2F、RE450、2.4GHzで。
建物の図の右、リビング2の外はやや広めなベランダ。厚い壁がありエアコンの室外機が盛りだくさんなので赤くなっているのでしょう。
下半分辺りの黄色い部分もやはり壁が多めで、リビング2の右半分はRE450の死角になっている可能性。延長コードでリビングと廊下の角にRE450を移せば良いと思うけれど、扉閉めるとリビング2は良くても奥の部屋がダメになるはず。
ラスト、2F、RE450、5GHzがこちら。
やはり若干障害物に弱いようで、壁などが影響しているのでしょう。
それでもベランダ以外はほぼ緑、時々黄色といったところで、つながらないわけでは無し。RE450を追加するとなると左上の太線四角の右下辺りなので2Fは意味無さそう。1Fと3Fは多少良くなるとは思う。
以上。増設の難点はSSID増えて切り替える手間も増える、利点は黄色が緑になる。この2つを足して2で割ると増設をおすすめ出来ない、難点が増える方がA氏家族の皆さんにとってよろしくないと判断しております。
しかし私にとってのRE450代約7千円はA氏なら700円くらいの感覚だろうから、おかわりされる可能性は高いと思う。まだC7+RE450導入から日が浅いので様子見。
電波強度最高の状態にこだわるべきか気にしないか
人により変わるでしょうな。
特にA氏はある物のコレクターなので、欲しいと思ったものは全部揃えたくなってしまう、無線も全部ヒートマップ緑にしたい勢いと言っていたので性格も関係するのでしょう。
無線LANは大容量なデータ転送が必要ない用途ならばある程度の速度が確保できていれば良く、重要な事は電波の強度よりも電波が切れない、アンテナがゼロにならなければ良いというのが私の感覚。
実際、私も数日遅れでC7を使っているものの、まだ一度も途切れた様子は無く、A氏宅のRE450が切れるといったこともなく安定しております。
どうしても切れず高速が良いなら工事をするか見た目悪くなろうともLANケーブルを延ばした方が良いと思われ、電波強度にこだわる感覚はまるでベンチマーク遊びにハマり、無駄にオーバークロックやSSDでRAID0しまくる中毒に似ている気がする。
というわけで、皆さんどう思われるか。
A氏は全部緑にしたいくらいなのでRE450おかわり、私は現状維持で良いと思っているのでRE450追加不要。どちらに賛同されるか。この結果によりRE450導入可否が変わるものではございません。少しは影響するかも程度。
結果のみ見るなら選択せず投票ボタン。※2017.07.04 締めて画像へ差し替え
>RE450の多段接続は本当に可能なのか
RE450ではありませんが、似たような検証をしている方、それなりに居るのですね。サポートにもFAQがあり。
ASCII.jp - 複数の中継器で会社の無線LANを無断で拡張しトイレで使えるように:週間リスキー
http://ascii.jp/elem/000/001/061/1061416/
BUFFALO - 中継機WEX-733Dを2台使って、通信距離をさらに延ばす
http://faq.buffalo.jp/app/answers/detail/a_id/8372
Panasonic - DY-WE10 | よくあるご質問一覧(Q04が該当)
http://av.jpn.support.panasonic.com/support/hdd/faq/dy_we10/dy_we10.html
>中継追加による電波強度の改善効果に疑問
個人的に中継器のイメージとしては
10→9→8→7→6→5→4→3→2→1→0
これが
10→9→8→→中継器→→7→6→5→4→3→2→1→0
こんな感じですね。遠くまで電波は届けますが、増幅するわけでは無いため、既に電波が弱くなっている場所へ中継器を設置しても効果が薄いイメージ。もしかしたらTP-Linkは超絶技術で、ルータと中継器の間に起こる減衰さえ補えるのかもしれませんが。
>屋内では100m程度と言われます。
屋内で100mとか三十三間堂ですかね。
京都観光Navi:蓮華王院(三十三間堂)
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=1&ManageCode=1000241
>SSIDが更に2つも増えてしまう
管理が面倒ですね。通信機器によっては「より強いWi-Fiを勝手に掴む」ものもありますから、部屋を移動しているだけで接続先が3つ切り替わるやも。
>2.4GHz接続
「2.4GHzはやや遅いけれど障害物に強い」に対し「5.0GHzは速いけれど障害物に弱い」でしたか。いいとこ取りの規格が早く出てくれると良いですね。
>皆さんどう思われるか。
私がA氏の立場なら「工事をしてLANケーブルを引き、2Fの床か1Fの天井付近へ無線ルータを設置する」で解決したいです。中継器を2つ設置するのはスマートで無い印象。
>切れず高速が良いなら工事をするか見た目悪くなろうともLANケーブルを延ばした方が良い
私もそう思いますw
実際無線LAN電波が届かなかったときはLANケーブルを天井に這わせる工事をしましたw