フェイスとドスパラより新製品。
いずれもBTO PCメーカーにしては珍しくRadeonを搭載しており、更に珍しく2枚挿しにてCrossFire Xという構成。仕様は全体的に高性能、大きな違いはフェイスはデスクトップ、ドスパラはノート。
てきとうに見て参りましょう。
フェイスがHD7990x2枚挿しゲームPC発売
タイトルに出ておりますが、PC本体のみで約60万円という宣伝モデル。
ASCII.jp:Radeon HD7990搭載、悪魔的スペックの60万円ゲームPC
http://ascii.jp/elem/000/000/789/789955/
この手の超高額PCはメーカー側が話題作りやブランドの認知度を上げる為に出していると思われ、売る気は一応有るけれど、とりあえず作ってみたという感覚かと。
なぜ60万円かは、半値に近い約27万円くらいがグラフィックボード(以下、グラボ)代となっており、現在市販のパーツ単品最安が約13.5万円。
source:価格.com - PowerColor PowerColor DEVIL13 HD7990 6GB GDDR5
これが2つ挿さっており高額になるわけですな。 主な仕様は以下。
- OS:Windows 7 Professional 64bit DSP版
- CPU:Intel Core i7-3970X EE(3.5-4.0GHz、6コア/HT、15MB)
- クーラー:簡易水冷 ※COOLER MASTER Seidon 120M
- マザー:Intel X79チップセット搭載 ※ASUS Rampage IV Extreme
- メモリ:32GB(8GBx4、PC12800) ※CENTURY MICRO製
- SSD:512GB(256GBx2、RAID 0) ※PLEXTOR PX-256M5S SSD M5S
- HDD:2TB(SATA3、64MB、7200rpm)
- グラボ:Radeon HD 7990 6GB x2(CrossFireX) ※AX7990 6GBD5-A2DHJ
- 光学:ブルーレイ読書BDXL対応 ※PIONEER BDR-S08J-KR
- ケース:フルタワー ※COOLER MASTER SGC-5000-KKN1-JP
- 電源:1200W(80PLUS PLATINUM) ※ENERMAX EPM1200EWT
自作PCマニアが構成したような仕様。
特にパーツの指定が量産系BTOとは言えず、昔のフェイスや今は無きクレバリーを思い出すような内容。
フェイスはこのやり方が厳しかった為に最近はパソコン工房などと同じ物を売っていたのでは無かろうかと思ったけれど、出せば売れていた昔とは違い、特徴が必要という事でしょうな。
Windowsは当然ながら7、高級モデルの為か最初からPro~となっており、ゲーム用デスクトップPCなのだから間違っても8とか使えない所。
CPUは最大4GHzの超高性能品で、価格コムを見て来ると最安でも10万円を切れるくらい。CPUとクーラー、グラボで40万円くらい行きそうなほど。
メモリは要らないほど盛られており、SSDは高性能で評判の良いプレクスター256GBを2台連結しRAID0で更に高速化。データ用と思われるHDD 2TBは今や普通くらいですな。
ブルーレイも高級PCの為か、要らないなら無駄だと思うけれど標準。しかしDVDスーパーマルチとの差が1万円もしないなら、と書こうと一応型番で検索すると最安約2万円となっており驚いた。
一般的なPCとの大きな違いはフルタワーで、ミドルタワーより更にデカいPCケース。電源の1200Wは、適当に電源計算するとこの構成では高負荷時1000W超えそうなので、これでもギリギリでしょう。
HDDは不明なものの、さすが60万いうだけは有るガチガチな構成。今てきとうに計算すると、自作でも50万は行くと思われ、14万のグラボや4万円以上するマザーを壊す自信が有るなら組立代行して貰った方が安全でしょうな。
しかし1枚14万もするグラボとなれば、AMDと競合するNVIDIAの現在最高性能と言われるGeForce GTX Titanと同じレベル。
ASCIIがリファレンス(AMDの参考製品)なものの、ベンチマークをやらかしていたので次で。
Radeon HD 7990のスコアやコスパは微妙
元記事はこちら。
ASCII.jp:Radeon HD 7990はライバルの巨人とどう戦うのか? (1/4)
http://ascii.jp/elem/000/000/783/783298/
HD7990との比較用には、AMDからは7990の1ランク下になるHD7970。NVIDIA製品はGTX 680 SLI(2枚挿し)とGTX Titan。
複数有るベンチマークより、3DMarkの結果を拝借。
Titanはゲーム用というより研究などの計算用らしい為スルーし、他のグラボとの比較を見ると当然ながら1ランク下のHD7970よりは上、GTX 680x2枚と良い勝負。7990は7970相当のGPUを2基搭載。
GTX 680の価格を見て来ると1枚で約6万円、2枚なら12万円くらい。金を出せば何とでもなる世界のようで。
ではGTX 680 SLIの方が良いのかと言えば私はそうは思わず、HD 7990は1枚で上のような結果なので、空きスロットの物理的な問題でCrossFire Xの2~4枚にすると(価格は無視するとして)GTX 680を上回るかと。知らないけれど。
他サイトが計測したベンチマーク結果も比較
アスキーの比較は「なぜGTX 680を1枚で回さないのか?」という疑問。言い換えると「なぜSLIにしたのか?」と不自然な感が有った為、PassMarkのハイエンドグラボコーナーを見ると、2013年5月現在、以下のような結果に。
HD7990はまだ計測(掲載)されておらず、2位にGTX 680、5位にHD7970が来ております。HD7990はHD7970より上としても、GTX670を超えられるのか。
そして最大の疑問はSLI(2枚)にしていないGTX 680を超える事が出来るのかというアスキーベンチへの違和感。
アスキーの記事はAMDから借りたサンプルのような物で、新製品の紹介目的は分かるとしても、せっかく借りたのだから半値以下のGTX 680に負けてもらっては困るという意図は無かったのか、は考え過ぎかも知れないけれど妙な比較。
一般的にHD7990やGTX690のようなデュアルGPU(グラフィックチップ2つ)や、SLIやCrossFire Xでの2枚挿しは性能が2倍になったりはせず、1.2倍前後が良い所、とするとなぜ敢えてGTX 680 SLIなのか。
いずれにしてもHD7990は性能の割に高額過ぎ、意地でTitanには手を出さないAMDファンやRadeon信者向けでしょうな。
アスキーよりグラフをもう一つ拝借、消費電力の比較。
これもやはりGTX680が2枚なのでHD7990の凄まじい消費電力が目立たないけれど、GTX680が1枚なら400Wは切ると思われ、HD7990を2枚(CrossFire X)にすると、私の単純計算では870Wくらい行くはず。
ベンチマークは参考程度というけれど、この比較はどうかと思う。最後のごまかしたような書き方も気になった。
価格が高くワットパフォーマンスも悪いため、真のエンスージアストしか手を出せない製品になったのは残念だが、これを手にした際の興奮度はさすがハイエンドカードといったところだ。
AMD信者とかRadeonファンで良いと思う所を分かり難く「エンスージアスト」としており、調べなければ何の事か判らない人が大半でしょう。私は今調べた。
アスキーは大手PCメディア、今回出た新製品ベンチマークの先駆けになったのだから、客観的に評価して欲しく、グラフで惑わされたりアスキーのレポートを鵜呑みしない方が良さそう。
ドスパラはHD7970Mx2枚挿しゲームPC発売
話は変わり、同じ頃にドスパラからもRadeonの新製品2個入りPCが発売。
ドスパラ、Radeon HD 7970M×2基のハイエンドゲーミングノート-ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1305/16/news050.html
これもやはりCrossFire Xというやつで、ノートの割に高性能。フェイスの2枚挿しと合わせる為、最上位モデルの仕様を引かせてもらいます。
- OS:Windows 7 Home Premium 64bit
- CPU:Core i7-3940XM EE(3.0-3.9GHz、4コア/HT、8MB)
- マザー:インテル HM77 Express チップセット搭載
- グラボ:AMD Radeon HD 7970M 2GB x2(CrossFireX)
- メモリ:16GB(8GBx2、PC3-12800、SO-DIMM)
- SSD:インテル 240GB(335シリーズ)
- HDD:1TB
- DVD:スーパーマルチドライブ
- モニタ:17.3インチ非光沢液晶(解像度:1920x1080)
価格は約40万円。
これも最上位モデルはフェイスと同様に宣伝用と思われ、BTOパソコン、ドスパラならこのような凄いノートも有りますと言いたいのかと。
この価格にしてはCPUとグラボ以外は控え目な仕様となっておりますが、BTOパソコンなのだから上げたいならカスタマイズしろという事でしょう。
ゲームをするならデスクトップPCを推奨
グラボの型番を見るとHD7970(M)となっており、知らなければデスクトップPC用の7970に近いのかと混同しそうになるかも知れないけれど、CPUと同様にM(モバイル用)なのでナンバーのみで比較は出来ず。
PassMarkのハイエンドグラボのベンチグラフをもう一度。赤枠の位置が違うだけで、先に使った物と同じ画像。
7970MはPassMarkによると高性能なもののデスクトップ用より低め。市販2万円台のGTX660にさえ負けており、2枚挿した所でHD7970を超えるか微妙。
もう一つ、同じくPassMarkのCPUのハイエンドより。
上はフェイスの60万円PCに載っていたCore i7-3970X EE、下はドスパラのノートに載っているCPU。
ドスパラが利益を盛っていないとするなら、今回の40万円ノートより高性能な仕様でも、デスクトップPCなら(パーツやモニタにこだわり過ぎなければ)20万円を切れるはず。
ノートは昔と比較し高性能になり、10万円を切れる物ならデスクトップPCとの差は縮まっていると思うけれど、ゲーム用クラスの高性能PCになると差は大きい。
このようなノートを購入する人が居るとするなら、フェイスの60万円構成とまでは行かないまでも、モニタ3枚で40万円くらいのPCをメインとし、サブゲームPCとして40万のノートを購入する、とかでしょう。
高ければ高性能は合っているけれど、いきなりノート一択はゲームPCの選び方としてどうかと思う為、どうしてもデスクトップが嫌とかで無ければ再考しましょう。
以上、Radeonも頑張っているという話のような気がする。
ノートとデスクトップで違う販売側の負担
まとまったと思い込み、ここからは余談。
売る側から見た時のBTOパソコンの利点は、パーツ単位で在庫管理出来る為、使い回す事で価値の目減りを抑えられる点。
具体的には、GTX 660(2.4万円くらい)のグラボを入れてAというデスクトップPCを標準構成で販売しても、GTX 660はBやCへ使い回せる上、D,E,F・・のカスタマイズ用にも混入可。更に修理用パーツとしても1種類で管理可能。
しかしノートの場合はベアボーン(ノート本体部分)単位になる為、ドスパラのような売り方をすると厳しい。
CPUは機種により違うのでドスパラが向上で後載せしていると思うけれど、グラボは全機種「HD7970Mx2」なのでベアボーンに含まれておりましょう。
単純に1000台仕入れ月100台売れたとしても、半年後の在庫は400。その頃にはHaswell(最近出た新CPU)が出回っており、高性能を目指した構成としてはこの400の在庫は劣化する一方。
それを見越して利益を盛らねばならないとするなら、高性能なノートPCはゲーム用に限らず、比較的安いと言われるBTOパソコンでも買う側に不利なわけですな。
割安に性能が必要ならデスクトップ。高性能ノートは趣味とも言える為、10万円を超えるようなノート選びの際は金持ちやマニア以外は良く考えましょう。
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