パソコン工房のLesance(レサンセ)ノートの実機評価、最終回。
その1は主にハードウェア、その2はOS上での動作、その3はベンチマーク。今回はそれらをまとめつつ私の主観を多めに入れて総評とさせて貰います。提灯記事にならぬよう厳しめに良し悪しを勝手に評価。
このページから入ってしまったなら、レサンセのノート評価その1からどうぞ。
改めて今回借りたレサンセ ノートの仕様を一覧。
- OS:Windows 7 Home Premium(OEM版 32/64bitセレクタブル)
- CPU:Celeron B800(1.50GHz、2MB、2コア/HT無、TDP35W)
- チップセット:Intel HM65 Express ※CLEVO W255HU(W240HU/W250HUQ)
- グラフィック:Intel HD Graphics(CPUに内蔵)
- メモリ:2GBx1枚(PC3-10600)最大8GB、空きスロットx1 ※ASink製
- HDD:320GB(5400rpm、8MB) ※SAMSUNG HM321HI
- DVD:スーパーマルチドライブ ※東芝サムスン SN-208
- モニタ:15.6型ワイド光沢液晶(解像度:1366x768)
- 有線:ギガ対応LAN、HDMI出力、D-Sub15pin、USB2.0x3 など
- 無線:IEEE 802.11b/g/n
箱と本体と付属品一式。
ここからは私の主観が多く、ほぼ個人的な感想文なので鵜呑みせず脳内で賛同以外に否定もしつつお読み有れ。
まとめを含め5項目で参ります。
安いノートはCLEVOのベアとOEM版Windowsが定番
ノート本体のベアボーンと呼ばれる部分はクレボの安物。当然ながら仕入れが高額なら完成品3万円で出来るわけが無く元が安いわけですな。
しかし安いベアがイコール悪いとは限らず、私が修理現場に居た当時と比較すると設計の小型化や部品の配置など余裕が見られ、時の流れを感じております。
レサンセノート内部の拡大。
気になる箇所はCPUとメモリの近さで、排熱が上手く行かねばメモリが故障する確率が高くなりそうな距離。
しかしHDDは写真左下の外側へ外されており、チップセットと無線LANカードがファンを囲むように配置され、吸排気さえ気を付けておけば数年前のノートよりは改善されていると感じた箇所。今時な固体コンデンサもGJ。
グラフィックの増設は無し、CPUも高性能では無くTDP35W程度なので、ゲームなどしなければ無駄に高性能なノートよりは良いでしょう。
やろうと思えば裏蓋を1枚開けると、CPU、無線LAN、メモリが簡単に交換可能。写真中央に赤と黒の線が付いている物はボタン型電池でやはり交換可能。触り忘れたけれど、昔のクレボと同じなら電池手前の黒い布テープを剥がし左のコネクタを外せば簡単に電池交換出来る設計。
安さに関して大きな理由のもう一つはWindowsがOEMな事で、例としてWin7 Home~のDSP版が千円しないようなパーツとセットで12千円ならOEMは7千円くらいと推測。
OEMはマイクロソフトに対して型番(機種、モデル名)を登録し、その型番を何台生産(正確には販売)するかで単価が決まる契約。書き過ぎなので一応私の想像という事で。
合わせると、ASUSやQuantaより安価なクレボのベアボーンと、DSP版より安いOEMにする事で万単位で製造原価が下がっており、更に記念と称した数量限定の在庫売り切り前提なので薄利多売が出来たと推測。ベアとOSの2点だけでも安い原因が判りましょう。
ハードウェアの性能以外で気になった所は使い難さ。私はどちらかと言えばノート否定派のデスクトップ信者。理由は単純にノートは操作性が悪く効率が落ちる為。
クレボと言えば安くてダサい。しかしこのノートは日本HPのような重厚っぽいデザインになっており、デザインの為に操作性が悪くなっていると感じた箇所はタッチパッド。
この写真は屋外で太陽光が反射しているのではっきり見えているものの、室内ではタッチパッドの枠が良く見えず、左右クリックボタンも一体化されているのでどこまで左右クリックか判別が難しめ。
毎度の事ながらこの手の難癖は「慣れ」で片付くけれど、私の手がしょぼいのか最後までパッド右端を縦に滑らせるスクロールが外れまくり。
マウス付けろ、でも終わるけれど、個人的にマウスを付けると省スペースというノートの良さが削られるので付けない派。
もう一つ気になった物はキーボードで、最近流行りのアイソレーションタイプ。やはり慣れるまで打ちづらい。
しかし、以前借りた日本HPのノートや家電店で時々勝手に触るNECや富士通製品などと比較し若干固め。
アイソレーションはストローク(深さ)が浅い為、柔らかいキーボードは指が触れないよう気になり肩がこるものの、この微妙な固さが私には合っており、他のアイソレーションと比較すると遥かに打ち易かった件。個人差が有るでしょうな。
私が所有している10型ネットブックと比較すると作業効率は遥かに良く、Ctrlキーが定位置でShiftキーが極小になっていないなど、ほぼデスクトップ用と同じ感覚で使えておりました。
初心者に親切か不親切なのか試用版ソフトの是非
アイコン左から2列目最後のショートカット以外は初回起動直後の状態。
起動時のうざさ以外、レビュー記事その3のベンチ比較で有ったMHFを起動するとKingsoft Officeの窓が突然かぶって来たり。不定期に右下でJWordやノートンがピョコピョコと出て来たり。
パソコンの使用歴が長い、または自作PCをやる人なら邪魔なソフトウェア群の余計な世話となるものの、これは購入直後のみ。全部削除(アンインストール)しても30分掛からないでしょう。
更にこのレサンセで言うと、OEM版Windowsの割に再インストール時にはバンドルソフトは全て無い状態、要するにパッケージやDSP版Windowsをインストールした時と同じ状態になり付いて来ない仕様。
レジストリなどが気になる人なら、購入直後にいきなり再インストールすると良いでしょう。1時間くらいかかるけれど。ちなみに私はアンインストールで納得派。
逆にこれはPC初心者にはやや厳しいと思われ、購入直後に初めから用意して有った物が再インストールで消える事になり、ダウンロードやパッケージ販売では無い為、ショートカットから有料ライセンスを購入すると再インストール後に入手方法が解らなくなるのでは無かろうかと。
また、再インストール時にWindowsのパッケージらしき物は開けず私は緑色のPC工房オリジナルディスクを使ったけれど、ドライバなどが一部入らず、ベアボーンのディスクから個別で再インストールになっており、これもPC初心者にはやや難関。
その2で書いたように、これら試用版のバンドルはPCメーカー(ユニットコム)が利益を確保する為なので、安いからとして多少の手間は仕方無いと諦めるものかと。
性能はネットブックより上、高性能ノートよりはやや下
このノートを借りていた期間は約3週間。しかし私は途中1週間ほど出張しておりノートに触った日数は4~5日程度。
短期間では有りますが、明らかにネットブックよりは処理速度が速く、無線LANも高速なn付で動画再生しつつ他のサイトでFlashを開けど支障無し。ネットブックでは音が途切れたり、描画が遅くなるなど。
現在ネットブックを普通に購入すると3~4万円。AcerやLenovoなら2万円台も有るけれど、2万円を切る物は滅多に無かろうと。
正直、当初はCeleronという事で馬鹿にしておりましたがデュアルコア。クロック周波数は1.5GHzなものの、その低さを感じさせない作業効率。
さすがに長時間のエンコードや大容量の動画ファイル編集などは無理が有ると思うけれど、その3ではモンハン程度なら3DグラフィックMMOでも普通に動かせております。
パソコンを家電のように見てしてしまう金持ちな大人は、有名ブランドの高性能ノートや一体型で満足するのかも知れないけれど、メールやブラウジングのようなインターネット用途や、年賀状印刷や事務用途なライトユーザには無駄。
性能を使い切れなければ高性能でもCeleronでも差が体感出来ず、私の用途を例にすると、主にブログを書く程度なので、このレサンセにCore iシリーズの高性能CPUを載せたり、大容量HDDやメモリを搭載しても全くと言えるほど違いが判らないはず。
それ故に高性能ノートよりやや下と見出しに入れておりますが、実際のところネットブックよりは快適なものの、今これを書いているデスクトップ(i7-950、Radeon~6670、メモリHDD大量)との違いは判らないレベル。
この3万円レサンセ ノートで遅い、重いと感じるなら用途からパソコンを選択していないと思われ根本的に誤り。
最低限の使い方(メール、Webブラウズなど)としてAtomなネットブックより上、高性能ノートとの違いは体感出来ない。
自作PCや中小企業では不可能な価格設定と売り方
上でベアボーンとOEM版Windowsにより万単位で安いと書いたけれど、更に細かくパーツの原価を探ってみましょう。
仕入原価をパソコン工房に聞いても教えてくれるわけが無いと思う為、価格コムなどを参考に2012年4月現在の最安相場でパーツ単位の値付。
- OS:Windows 7 Home Premium・・12千円
- CPU:Celeron B800・・6千円 ※参考:インテル出荷単価80ドルより
- メモリ:2GBx1枚(PC3-10600)・・1千円
- HDD:320GB(5400rpm、8MB)・・6千円
- DVD:スーパーマルチドライブ・・3千円
ここまでの小計は約29千円。
メモリとCPUは100円単位を切り捨てており、送料込なのでこれらだけで今回のレサンセ ノートの販売価格(29,980円)に到達。
ノート本体部分(液晶モニタ、マザーボード、キーボードなど)が0円となり意味が判らないノートパソコン。
台数限定だからとは言え、ユニットコム全体(パソコン工房、faith、TWOTOP)で赤字を出しまくっているとは思えず、クレボの完成品ベアがいくらなのか不思議。
原価が値付した最安相場の8割としてもベア代は4千円程度になり有り得ず。クレボは一体何をしているのか解らなくなる設定。
これはパソコン工房(ユニットコム、MCJグループ)だから出来る事で、クレボが同じ価格で個人へ販売するわけが無く、サイコムやショップのような中小企業はWindowsのOEM契約は数量に無理が有り、絶対に3万円は切れない仕組。
OS別売やデスクトップなら3万円は出来るかも知れないけれど、液晶パネルが付いたノートでこの価格設定はおかしい。
また、パソコンという物は数ヶ月で価値が下がる物なので、短期間で一気に販売しなければならず、パソコン工房クラス以上の知名度や宣伝費が出せなければ不良在庫になり腐り現金が減り経営が苦しくなるもの。
私は現在ではパソコンの性能より売り方の方に興味有り、OEMと完成ベアによる大量生産と、半年掛けず売り切ってしまったユニットコムの売り方に感心した次第。
ユニットコム3万円Lesanceノートの評価(まとめ)
このノートが5万円なら驚かないし、レノボやエイサーのショップ在庫と比較出来るけれど、4万円なら在庫処分かと気にするところ、しかし3万円は本当に理解不能。
その3万円に対してこの性能は充分で、ネットブック並の価格で操作性や視認性は良く処理速度もストレス無し。3万円のタブレットPCと比較するはおかしいけれど敢えてすると、Windows7のHome~仕様はパソコンとして必須な価値。
高性能パーツが載っていない為、高級ノートほど神経質にクリーニングを気にする事も無し。動画で上手く表現出来なかったので上げていないけれど、通常時は無音に近く、モンハンで暴れた時にファンの回転音が聞こえる程度。
故障についてはパソコンなので普通に有ると思うけれど、私が1年以上前から選択肢にパソコン工房系を入れている理由は長期保証の安さ。
29,980円のPCに5,250円の延長保証は17.5%、約2割とやたら割高になるものの、このノートで5250円を切れるパーツは2GBメモリが約1500円と光学(DVD)ドライブが約3千円くらい。
故障し易いパーツはHDDとマザーボード。1年以上経過すると320GBのHDDは5千円を切れているかも知れないけれど、マザーボードだけは中古レサンセをヤフオクなどで落とし部品取りしなければ無理。
ノートなら送料は離島や北海道で無ければ千円を切れると思われ、1年経過後からの2年間に故障しないまたは自力で改造修理する自信が無ければこのPCに限らず延長を推奨。
3年保証付の35千円で販売しても売れると思う程。
一言で評価すると、しつこいけれどこの価格でこのノートは有り得ず、今後のレサンセシリーズにも期待したい所。しかし今レサンセのページを見ると、ここ優秀なコストパフォーマンスのPCは見当たらない。
この度、デスクトップをノートと同時に借りた為、来週辺りに3連載でデスクトップを評価して参ります。毎回書いているけれど、このレサンセ ノートは完売。既に販売されていないので、現行の レサンセシリーズはこちらのページでどうぞ。
今回借りたノートとデスクトップを比較すると、個人的にはノート嫌いなもののノートの方が価値は高いと見ており、そのくらい見た目や性能が「3万円にしては」凄まじい品。もう無いけれど。
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