マウスコンピューターがオーバークロック(以下、OC)済PCを新発売。
2012年2月現在で2種類出ているSandyBridge-Eの内、OC済PCはCore i7 3960Xを搭載。CPUのみで市販単品8万円を切らない高級品。バランスを取る為に他のパーツも高性能で揃えて有り、最下位機種でさえ約25万円。
ビデオカード(以下、グラボ)もOCされている御様子。
SandyBridge-Eとは何か簡単に解説
自称PC初心者用にSandyBridge-Eが載るPC丸ごとの特徴を挙げると
- インテルCPUが載る構成の最新版
- マザーボードのソケットはLGA2011
- チップセットがX79
- Core i7- 3000番台
- メモリが4ch動作したりPC3-12800対応など
昨年11月に発売された新製品で、CPUが物理的に大きくなりチップセットはX79、i7の3000番台という、要するに昨年1月に出たSandyBridgeとは別物。
メモリはクアッドチャネルで転送速度も高めに対応しているけれど、ここから先はマニアックな内容になり役に立たないので省略。
CPUは現在2種類で主な性能は
- i7-3930K(3.2-3.8GHz、6コア/HT対応、12MB)・・約5.5万円
- i7-3960X EE(3.3-3.9GHz、6コア/HT対応、15MB)・・約8万円
誤差のような性能差では有りますが、右端は2012年2月上旬現在の市販単品の最安。32%差と思うと大した事が無いように感じるけれど、差額の2.5万円有ればSandyBridge(H2)の最高性能に近いCore i7-2600Kが買える程。
それ以前に5.5万円も有れば普通のデスクトップPC丸ごとや、8万円ならHPのSSD搭載ウルトラブックが買えましょう。
発売から3ヶ月弱なので更に値下がりすると思われるものの、一般的なPCユーザとは価値観の違う趣味の世界。または業務用。
これを脳内に突っ込んでマウスの新製品を見て参りましょう。
マウスより「i7-3960X EE」と「GTX580」のOC済PC
新製品はマスターピースシリーズの3機種。
やたら豪華に見えるけれど、価格は本体のみ、但しマウスとキーボードは付属。モニタやスピーカーはイメージという事ですな。
3機種内で最安「MASTERPIECE i1540SA1-DOC」の主な仕様を一覧。
- OS:Windows7 Professional 64bit・・15千円
- CPU:Core i7-3960X EE(4.0-4.0GHz、6コア/HT、15MB)・・80千円
- マザー:インテル X79 Express チップセット・・20千円
- メモリ:16GB(4GBx4、DDR3 PC3-12800)・・6千円
- HDD:1TB(SATA3、7200rpm)・・9千円
- DVD:スーパーマルチ・・2千円
- グラボ:GeForce GTX580(1.5GB、OC済、EVGA製)・・44千円
- 電源:900W(80PLUS SILVER)・・10千円
- ケース:ミドルタワー・・10千円
マウス価格は約25万円(249,900円)。右端に付けた単価は私の脳内価格コム最安で、市販パーツ単品価格の総額は約19.6万円。マウス、キーボード、カードリーダーを入れて約20万円くらい。
量産系BTOパソコンの割りに自作PC用パーツ(単品合計)より高くなっている理由は、17万円前後を超えると量産メーカーとは言え安くならないもので、パワーアップされているOC代も入っていると推測。
赤くしている箇所は特徴。
CPUはターボブースト無関係に全コア一律4GHzへOC済。メモリはクアッドチャネルで転送速度やや高めな物。HDDのSATA3は標準になりつつあるのでスルー。
グラボもOC済でマウスにしては珍しくメーカーの名前が載っております。電源は大容量な変換効率の高いユニット。
量産系のマウスがなぜOCという冒険をしているか推測すると
- インテルのKまたはX付CPUに対するOC保証適用?
- EVGAがグラボのOCを保証している(かも知れない)
OC保証は先月インテルが発表したもので、保証価格は30ドルくらいで3年保証するとか。個人ユーザ向けと思われるけれど、メーカーのバルク品に適用されてもおかしくは無し。
グラボのOCはEVGAと協力した企画と思われ、グラボOC用ツール(Precision)が付属しているとプレスリリースに書かれておりました。
需要は置いておき、気になる事はステッピング。SandyBridge-Eは最近C2ステッピングが発売されたとニュースが流れ、ドスパラが宣伝に利用。
ドスパラ、C2ステッピングSandy Bridge-E搭載PC販売-ITmedia
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1201/30/news074.html
ステッピングが新しくなっただけで宣伝になっている理由は、C1ステッピング(発売からC2が出るまでのCPU)はエラッタ(CPU内のバグ)によりVT-dが無効化されていたとの事。
SandyBridge-Eに新ステッピング、「C2」 / VT-dのエラッタ改善
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20120128/etc_intel.html
AKIBA PC Watchより一部引かせてもらいます。
(1月)28日(土)時点では、Intel製品のデータベースサイト「ARK」でC2ステッピングのS-Specを検索すると、検索結果としては出てくるものの、なぜかそのリンクはC1ステッピングと同じもの。VT-dの有無の項目も「No」となっている。
VT-dが効かないとなれば一般ユーザにも関係する問題はWindows7のPro~以上で使えるXPモードの可否。マウスの約25万円PCは標準でWin7 Pro~になっており、C1だと使えないのでは?と思いきや、VT-d無しでも行けるよう改良されておりました。
Windows XP Mode、VT非対応CPUでも利用可能に|スラッシュドット
http://slashdot.jp/story/10/03/21/018238/Windows-XP-Mode(略)
しかしこれでマウスがC1かC2が不明に。
今これを書いている現在、マウスのリリース記事や販売ページにはどこにもC2ステッピングとは表記されておらず、簡単に言うと不良品もどきのCPUが載って来る可能性有り。
どうしても変態PCの世界へ飛び込むならマウスに聞いた方が良さそうですな。電話では「聞いてきます」と言って5分くらい待たされるのでメール推奨。
オーバークロックの必要性と危険性
私の感覚では有りますが、結論から言うとOCはマニアが数字を見て満足する遊び要素が強め。
体感出来る速度差を出す為には、低クロック(GHzの数値部分が低め)のCPUを限界まで上げると判るかも知れないけれど、3.3~3.9GHzが4.0GHzになった程度では難しいかと。
私はOC遊びの趣味は無いけれど、どの程度違うものか体感したい為に Core i7 950を3.06GHz(133MHz x 23)から2GHz台(確かx20くらい)まで落とし1ヶ月以上使っていたけれど判らず。
私の例では用途が軽過ぎたという問題が有ると思うけれど、動作周波数で実用性が上がるとは思えず、故障する以前にしょぼいCPUクーラーを付けていると騒音がひどくなる難点が有りましょう。
グラボのOCは更に微妙。リリース記事引用と向上率を追記。
- グラフィックスクロック: 772MHz -> 797MH (+3%)
- プロセッサークロック: 1544MHz -> 1594MH (+3%)
- メモリクロック: 2004MHz -> 2025MHz (+1%)
こちらはOC用ツール付属との事なのでユーザが数値を変えて遊べるかも知れないけれど、販売ページより引用。
出荷時に設定されているOVER CLOCKは保証対象でございますが、別途お客様でOVER CLOCKの設定を変更する場合はお客様の自己責任の下での作業となり当社の保証対象外となります。
1~3%のクロックアップでグラボをOC済と宣うは微妙。
GTX590では有りますが、OCで発煙している動画が有ったのでどうぞ。やり過ぎるとこうなる可能性も有るという脅し。
全37秒。最後にスロー再生されるので、時間が無い人は右3/4くらいからスタートしてみましょう。
マウスよりOCオーバークロック済PC発売(まとめ)
20万円を超えている時点で本当に高性能PCが必要なユーザ用。パソコン工房が年に数回やる、売る気の無さそうな宣伝用と思われる超高額(約50~80万円)構成と似たようなものかと。
OCは5年以上前ならPC性能を上げる為の一手段では有ったものの、現在は安いCPUでさえ元から高クロックになっておりOCはまず不要。
マニアの遊びと書いたけれど具体的に、私の知る限りでは
- メモリクロックや電圧の調整が楽しい
- 起動しなくなる限界まで上げるスリルを味わう
- 長時間の負荷を耐える自己満足やマニア同士の自慢
- ベンチマーク(処理速度の目安用ツール)の数値を少しでも上げたい
- 人とは違うパソコンを持っている(キリッ
マウスも他社とは違うゲーマー向けBTOパソコンを発売(キリッ と宣伝したかった思われ、真に受けて5万も乗せて購入するものでは無かろうと。
性能は最上に近付くほどコストパフォーマンスが低下しまくるので、本当に実用として購入するなら12.5万円のPCを2回購入した方が得。
パソコンは10万円が20万円PCの半分の性能にはならない物なので、高額なら比例して高性能という事では無し。
用途を見直し冷静に予算を考えましょう。
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