マウスコンピューターよりクリエイター向けの低価格PCが発売。
インテルの新CPU、Ivy Bridge発売の流れで新製品を出したと思われる最安の標準構成は約8万円。搭載のグラボ(ビデオカード)、QuadroはOpen GL用、主にゲーム用とされるGeForceのようなDirect Xには弱いのでご注意有れ。
安いなりの構成、どのような物か見て参りましょう。
クリエーター向け「Quadro 600」搭載PCが約8万円
マウスのプレスリリースより。今回発売の機種は全4種類で、標準構成は79,800円から139,860円。その内の最安なミニタワー「LM-iB500S-WS」で。
約8万円とは本体のみで左のモニタは別。
PC本体とモニタの比率で考えると、上のイメージのモニタは23~24インチくらいでしょう。ミニタワーの高さは約37cm。
主な構成は以下の通り。意味不明な箇所はスルーで問題無し。
- OS:Windows7 Home Premium 64ビット
- CPU:Core i5-3450(3.10-3.50GHz、4コア/HT無、6MB)
- マザー:インテル B75 Express チップセット搭載
- メモリ:8GB(4GBx2、PC3-12800 DDR3)
- グラボ:Quadro 600(VRAM:1GB)
- HDD:500GB(SATA3接続、7200rpm)
- DVD:スーパーマルチ
- ケース:ミニタワー
- 電源:500W
Windows7にセレクタブルと記載が無く64bitのみでしょうか。マウスは基本的にOEM版と思っておりましたが、最近のモデルはセレクタブルの文字無しが多め。
第3世代Core iシリーズの内では中程度の高性能CPU。高めな動作クロック、4コアも有りキャッシュは6MB。インテル公式ページを見ると、MaxTDP77Wとなっておりました。
チップセットはインテル7シリーズで現状最も安価なB75。マイクロATXなのでほぼ正方形の省スペースPC用のマザーボード。
メモリ8GBは一般的には多め、デザインなど用ならやや少なめか標準的な容量と言えましょうか。
特徴はグラボでQuadroシリーズの安い機種。とは言え、これだけでも現在の最安で2万円前後はする代物。VRAMが少なめなので、3D動画などを盛大に処理したり、コンビナートの設計などは厳しいかも知れませんな。
HDDは今や小さめと思える500GB。一般的な事務用途なら充分かも知れないけれど、1ファイル100MBクラスが大量に発生するなら少ないかと。
光学ドライブ、ケース、電源は普通過ぎて何とも言えず。その他、キーボードとマウスも付いております。
「GeForce」GTX580と「Quadro」600のベンチマークスコア比較
マウスコンピュータが比較グラフを載せていたので拝借。
緑だけがGeForceで他は全てQuadro。
Quadro 600のスコアは大して高くないものの、GTX580に勝っております。別のベンチマークスコアとして、PassMarkより画像を拝借。
反転させている、上のGTX580は約4000、Quadro600は700。
マウスのベンチはOpen GLの処理性能を測るソフトウェアで比較しており、PassMarkはDirect Xの比較なので、Quadroで3Dゲームをしたり、GeForceで3D動画を編集しても性能が生かされない場合が有るとして。
ベンチマークソフトと同様、アプリケーションによりどのような処理をするかは変わり、クリエイター用ソフトはPC本体より遥かに高額な事が多い為、利用するソフトウェアに合うパソコンを選びましょう。
ミニタワー「LM-iB500S-WS」の利点と難点を各5つ
強引に10個ひねり出してみたので、安いクリエーター向けPC購入を考えているなら、脳内の片隅にでもどうぞ。
先にこのPCの難点を5つ。
1.拡張性が低くメモリは最大16GB
チップセットのB75は、安さ優先で作られるマザーに載る廉価モデル用で、マザーボード(メイン基板)が小さく拡張性は低め。BTOパソコンは改造を前提としないので後付しないなら良いけれど、将来パーツの増設や換装を考えるなら不利と言えましょう。
B75でもメモリスロット4本のマザーも有るけれど、マウスPCの仕様には2スロットと書かれており、搭載出来るメモリは最大16GB。Win7のHome Premiumは認識が最大16GBなので、カスタマイズで上げなければ問題は無し。
2.小型ファンの高速回転が騒音へ
スリムケースでは無い割にグラボがロープロファイル対応になっており基板が小さめ。同時に冷却ファンも小さくなるという事は、小型ファンが高速回転すると思われ、静かな環境なら若干うるさいやも知れず。
価格コムのレビューを読むと、負荷が掛かるとファン回転は上がるが静かな方との御意見。Quadro 600はELSA製品しか無いので、気になるなら上を目指しましょう。高性能に比例し冷却が必要になるので、静音性は一概には言えないけれど。
3.ビデオカードの3年保証が無駄
ELSAの公式ページで仕様を見ると、このQuadro 600には標準で3年保証が付いているらしく、パーツ単品で購入すると3年。マウスはPC本体の保証になるので標準1年。
マウスがバルク(付属品無し)、リテール(市販品)いずれを使っているかに関わらず、量産系BTOメーカーは完成品PCとして保証を付けるので、自作PCを組立出来る人なら微妙に損をした気分になるかと。
4.デザイン目的でも最低限の構成
上でマウスのベンチマーク比較グラフが有ったように、Quadro600は下位モデルの低価格なグラボで、上を目指すとグラボだけで市販最安40万円を超える物も有り。
グラボ以外でも、CPU、メモリ、HDDなど、個人的にはこれより下げると納得出来ないレベルと思うので、どうしても安く導入したいなら、でしょう。
5.マイクロATXケースは空間が乏しい
マウスの提案の一つに、業務用としての大量導入を勧めていたけれど、省スペースの代償としてPCケース内部のエアフロー効率やホコリが溜まりやすい事がミニタワーは弱点。
エアコンの効かない土足の事務所で作業机の横に突っ込むと夏場は厳しくなる可能性。上位機種はミドルタワーなので、存在感が有るけれど中身の事を考えるとケースはでかい方が安心。HDD500GBが少ないと思えど、ミニタワーはHDD増設で更にケース内の空間が少なくなるので良く考えましょう。
次に利点も5つ。
1.DVI-Iなど高解像度に対応可能
Quadroシリーズの中での安物とは言え、DVI-Iはデュアルリンクになっており、画面解像度はWQXGA(2560×1600)まで対応。DisplayPortも同様の高解像度。
デザイン用途なら画面解像度は重要と思われ、作業効率に関わりましょう。8万円のPCに現状のWQXGA対応モニタの価格はどうかと思うけれど、モニタはPC本体より長く使うと考え、PCで削った予算をモニタに回すという考え方は大有りかと。
2.グラボがロープロで汎用性有り
ロープロ故にファンが小型で高速という難点は有るけれど、要らなくなった際に外して適当なスリムケースへ取り付けも可能。自力かつマウスの保証や修理は出来なくなるけれど。流用以外にグラボ単品のオークション出品など有利。
B75はマザーボードに映像出力が付いているはずなので、Quadro不要になった際はグラボを外してCPUに内蔵のインテルHDグラフィックス2500が使用可能。一般事務用PCに変更するなら、Quadroは売っ払っても良さそうとして。
3.USB3.0ポートが前面に標準搭載
HDDは500GBなものの、前面にUSB3.0端子が付いており、外付けHDDやSSDなどを接続すると簡単に高速ストレージを増設出来る事に。カードリーダーも3.0対応なら2.0より転送が速くなるやも知れず作業効率が向上。
仕様一覧を見るとPCI Expressx1スロットが0になっているので、増設しそこから前面へUSB3.0を延ばしているのでしょう。
4.修理は恒久的にメーカー依頼可
自作PCはマニアには楽しみかも知れないけれど、普通の人には難点が自力修理。無改造でユーザ過失で無ければ、保証期間が過ぎても5年以上はメーカー(マウスコンピューター)が有料修理してくれるはずなので故障しても安心。
何年まで対応するかはメーカーや時には機種により変わる事が有るので、5年以上使うつもりなら前もって聞いておきましょう。
5.飯山モニタが比較的安く購入可
マウス(MCJ)の利点はiiyamaを子会社に持っており、連動している為か安価にモニタセットが出来る事。
価格コム最安にさえ数千円勝ってしまう機種も有るので、DVI-IやDisplayPortなど接続に不安が有るなら、カスタマイズに入れて質問してもよろしいかと。デザイン入門用ならiiyamaでも良いと思うけれど、プロとして長くやるならEIZOがお勧め。
約8万円のデザイン用PCをパーツ単品と価格比較(まとめ)
恒例の市販パーツ最安の合計と比較してみましょうか。値付けは、価格コム最安や私の脳内相場で厳しめに。
- OS:Windows7 Home~・・12千円 ※DSP版換算
- CPU:Core i5-3450・・17千円
- マザー:インテル B75・・6千円
- メモリ:4GBx2、PC3-12800・・2千円
- グラボ:Quadro 600 1GB・・20千円
- HDD:500GB(SATA3、7200rpm)・・6千円
- DVD:スーパーマルチ・・2千円
- ケース:ミニタワー・・4千円
- 電源:500W・・4千円
- キーボード、マウス・・計2千円
- USB3.0(PCI-E用)・・1千円
総額は約76千円なので、マウスのBTOパソコンの方が4千円くらい高額。ケースと電源の値付けが高い気がするので5千円くらいは差が出るやも知れず。
マウスの通常のBTOパソコンなら上のような価格比較は単品総額と同じくらいか安くなるものの、今回は数千円高め。Quadroという特殊なグラボが問題と思われ、在庫や仕入で価格が調整されると推測。需要が低いものは何かと高額な為。
自作PCをやらないなら、5千円程度の差なら納得かも知れないけれど、マウスの弱点は送料に有り。PC本体だけでも約3千円、モニタも付けると更に3千円。
また、マウスの3年保証はデスクトップは一律7350円なので、PC本体と3年保証だけでもプラス1万円くらい。
クリエイター用PCとして同じレベルで対抗している量産系BTOメーカーはドスパラも有るので、マウス以外も見てみましょう。
パソコン工房系(faith、TWOTOP含む)やフロンティアは、クリエイター向けでもGeForceを載せるので、用途によるけれどご注意有れ。
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