ご存知だっただろうか。
正確には絶対に使えないわけでは無く、業者レベルで上手い事やれば交換は可能らしいけれども技術的に普通の人には無理だと思えるほど困難。同型HDDの基板交換は簡単だろうと思っておりました。
キーワードは基板と中身の整合性。
故障した同型HDDで基板交換しても使えない可能性大
元ネタはこちら、ougam さんのコメントより。
SATAの世代のHDDは基板を外した時点でロックされてデータはすい出せません。
私がメーカーの修理現場に居た当時はIDEからSATAへの過渡期が終わり数年後くらいで、修理品の1~2割がIDE、私のメインPCもSATAのHDDとIDEのHDD&DVDドライブが付いていた頃でSATAは120~320GBが主流。
修理現場の担当者は私が最も一般的なPCユーザに近いと言えるほどのマニアックなPC変態ばかりで、HDDが認識しないので同型の中古やジャンクをヤフオクやビッダーズで手に入れ交換したのような話は休憩時間の雑談あるある。
HDDの基板は本体へ密着する直付、モーターはフレキシブルケーブル、この2ヶ所で繋がっており、基板交換するならネジとケーブル着脱するだけなので簡単。
この画像なら基板上の星型のネジ4本、右のオレンジ色のケーブルを基板側から外せば基板取れる。私でも出来ると思っていたが今まで機会が無かったので分解はしても交換したことはございません。
正直、疑っていた。けれどマジだった。
HGST
まずはこちら、今から8年くらい前の記事。
2010/08/10:基板損傷HDDを基板交換で復活させてみる
http://trashbox.homeip.net/nownow/20100810/
前半の流れを書くとこう。
- メールサーバーが無反応
- HDDが息をしていなかった
- スピンアップ(回転開始)しない
- 同型HDP725050GLA360を探し購入
- 基板交換し電源入れるとスピンアップするが認識せず
どうしても直したいなら私も同じ流れになるはずで、こちらも同意。
ということは、ディスクと基板との間で紐付いている何かがある?
海外サイトの翻訳を引用。
最近のHDDは基板とディスクとの間で整合性チェックを行う作りになっており、チェックに失敗するとディスク・基板の双方をロックするようになっているからである。
ougam さんがコメントで書かれた通りでロックされてしまうそうな。
となると私レベルではどうしようも無いのであきらめる、が、この人は発想が素晴らしい。何と基板を2つとし、モーター回す電源用基板とデータ用の基板を別々並行に。
無理だったらしい。
これであきらめるかと思いきやこの人は違った。
中央付近の黒い四角なチップ、何とEEPROM交換である。
両側の足部分にハンダを流して一気に温めてピンセットで引き抜く、これを両側やって取り外してハンダを吸い取り脂をアルコール洗浄。トラックボール一撃で壊してしまう私には神すぎる技。
EEPROMは電気的に消えないようプログラムされている電気制御で書き換え可能なメモリ、のような感じ。これの中のファーム情報がHDD内と合っているか確認するのでしょう。
なので不良基板のEEPROMが生きているなら、OK基板のEEPROMを抜いて交換し、交換した不良側EEPROM+正常な基板として認識し起動まで行けたという。もはや業者レベル。
TOSHIBA
東芝も情報がございました。2016年9月の投稿であり比較的新しい。
価格.com - 基盤交換で… 東芝 MQ01ABD100Hのクチコミ掲示板
http://bbs.kakaku.com/bbs/K0000421167/SortID=20230785/
型番、リビジョンは全く同じなのでLBAも当然同じ。
違いはシリアルナンバーは固有のものなので当然別モノ、そして日付が2013年の6/22と7/6日という違いあり。違うと言えどもたったの2週間程度。しかしロットが違う事を意味している以前にシリアルの違う基板の時点でマズいご様子。
こちらご本人は基板ではなく本体側の故障のようだとして締めくくっているけれど、この後に出て来る人の情報がHGSTでEEPROM交換した人の翻訳内容と似ている。
個体毎の微妙な調整情報が記録されているので、それが違えば読めなくなります。そちらを移植すれば読める様になりますが、単純に基板だけを変えても動きません。
続いてWDも。
Western Digital
同じく価格コム、2010年12月のスレ立て。
価格.com - HDD基板交換の最終報告 WD20EARSのクチコミ掲示板
http://bbs.kakaku.com/bbs/K0000077883/SortID=12324158/
主治医のコメントより。
(SMARTの部分でダメ←もしかしたら基板部での記憶内容とデスク(円盤)部分での記録=存在するかどうかも知らないけど=が一致しないからかも)、いままでと同じで、BIOSで認識できませんでした。残念!
※SATA 6 が ターゲットのHDDです
やはりHGST、東芝と同様でこの人も基板とディスク内の不一致と予想されております。SATA6がWD20EARSならば、SATA1のWDC~と同様に最下段へSATA6~の表示が出るはずなところ出ず。
専門業者のページが詳しい。
最新のハードディスクの多くは、PCBとハードディスクアセンブリのそれぞれのパラメーターが適合しなければ、正常に動作することができません
と言うことで、近年のHDDは同型、同ファームバージョンのHDDを入手して基板交換しても、動作するようにはなりません。
ソースのURLのサイトは消滅しているのでアーカイブサイトへリンク。重いのでスマホやキャリア回線なら行かない方が良いかも知れない。2009年1月のページへのタイムスリップ。
- ハードディスク[HDD]の基盤交換について|データ復旧センター
https://web.archive.org/web/20090123093356/http://www.drivedata.jp/tips/pcbswap.html - WesternDigital HDD故障症状と修理・修復|データ復旧センター
https://web.archive.org/web/20090122105418/http://www.drivedata.jp/maker/wd.html
業者が言うのならそうなのでしょう。
Seagate
安定のシーゲート、いずれもファームウェアの不具合により基盤交換を試みられている2010年と2012年の記事。
- 超絶はらへ('A`) - 認識しなくなったHDDをどうにかしてみた
http://sunao.orz.hm/blog/?no=40 - ミナセ宗谷 ブログ : HDDが壊れたが電子工作で直した話
http://minasesouya.blog83.fc2.com/blog-entry-81.html
やはりここまでの全メーカーと同じで、安易に基板を交換するとロックされてしまうそうな。
この場合はHGSTの人の手順と同様にEEPROMを新HDDの基板の物と交換し、新基板へ交換すれば行けそうなところ、問題はファームであり強引にファームを書き換える手順があるらしくいずれも電子工作。
私ならあきらめる。
WDとSeagateはこちらにも情報あり、該当箇所はいずれも全く同じ文章。
HDD基板交換した場合の問題点
基盤が交換されファームウェアの内容が異なっていると誤った情報を元にブートを開始、様々なパラメータが(位置情報、ヘッド固有の情報等)異なるため当然残りのファームウェアが読み出せません。
source:Seagate製HDDの修理のまとめ - RD-Wiki
source:WestenDigital製HDDの修理のまとめ - RD-Wiki
Seagateの電子工作が必要になる可能性を秘めている型番とファームのバージョンが掲載されているため、1TB以下のBarracudaまたはDiamondMaxシリーズをお持ちなら確認しておきましょう。
確認するならCrystalDiskInfoなどで。赤枠の上が型番、その下へファームウェアのバージョンが出るはず。
source:Seagate製HDD「ST3000」の故障はヤバい壊れ方をする
またはバックアップして窓から放り投げるという手も。
HDDの廃棄時は基板を外せば良いのか?
それでもよろしいという事になりますな。
基板はトルクスレンチやドライバーさえあれば女性でも外せるくらい楽、ケーブルはハサミで切ればOK。
ラベルは剥がさなくとも、基板が無ければそのHDDのEEPROMが無い、無ければヘッダ位置などの情報が無い時点で拒否されるだろうから基板が判るラベルそのまんまでも再起不能。
但し、HDDがHDDとして起動しないだけれあり、業者並の設備や同等の技術があれば更に分解してプラッタを取り出してデータ読んだり復元は絶対に不可能とは言い切れない。
ただ、そのHDDを拾った人間が悪意ある業者か、業者でなければ20万円くらいかけて復旧業者へ依頼するならばの話となり現実的とは言えない。
とりあえず基板を外す、可能ならラベル剥がすか削り落とし基板とHDDを別の日に家庭ゴミの不燃物として捨ててしまえば100%近い確率でデータが漏れる可能性は無いはず。
ところが私の場合は他人のHDDをバラして捨てる事が時々あるので、プラッタへやすりがけする所までやるので面倒なので持ち込みは出来るだけご遠慮してどうぞ。
もちろんタダで引き受ける。関係無いけれど最近は焼酎ではなくプレミアムモルツにハマっております。
以上。今時のHDDの安易な基板交換はまず無理と考えると同時に、基板さえ捨ててしまえばオリジナルのEEPROMが無いので安易に捨てる事も可能、という考え方もアリでしょうな。
そういえば私も、6年位昔に、今は亡きMaxtorのHDDを、こうやって直したことがございました。基板に表面実装されたメモリーを外すのは、難易度が高いかもしれませんね。ICの足に低温半田で半田溜まりを作ってから取り去る。毛抜きの先がヒーターになってる工具が使えれば楽ですが。いずれにしてもディスク本体側のファームウェアもしくは工場設定データが壊れてたらどうしようもありません。最近の製品は困難ではないかと思いました。
>HDDの廃棄時は基板を外せば良いのか?
>それでもよろしいという事になりますな。
これは参考になります。表面のシールを剥がせばもっといいかも。
>プレミアムモルツ
こんなのが発売されるようです。消費が捗りそうですなw
https://rocketnews24.com/2018/02/26/1020145/
>ご存知だっただろうか。
私はもちろん知らず。基板を外そうとかHDDを修理しようとか考えたことも無かったですし、今後とも無いです。
>中央付近の黒い四角なチップ、何とEEPROM交換である。
知識と技術と根性と発想力と探究心と機材と時間が揃っているなら、何とかして動くよう工夫してみよう、と思う気持ちは大いに分かります。
>HDDの廃棄時は基板を外せば良いのか?
トルクスレンチ(星型レンチ)を買うのが面倒なら、基板をライターで焦がすとか、カッターでガリガリ削るとかでも十分そうですね。
>プレミアムモルツにハマっております。
ちなみにビールが苦くて苦手という方は、オレンジピールが入っていてフルーティな「水曜日のネコ」というビールがお勧め。たぶん、会社の飲み会で連れて行かれるような飲み屋には無いです。
Amazon.co.jp: 水曜日のネコ 350ml×8本
https://www.amazon.co.jp/dp/B00PVJ4LQ4