BTOパソコンが自作より安くならない例を1つ。
8GBメモリが値下がり中の為かマウスコンピューターがメモリ64GB搭載の高性能PCを発売。本体価格は約19万円でチップセットはX79、LGA2011のSandyBridge-E構成にGTX580を標準搭載したゲーム用パソコン。
パーツ単位にバラして比較するいつものやり方で参ります。
BTOパソコンが高くなる価格帯は12~17万円くらい
標準構成価格がおおよそ12~17万円辺りを超えるとBTOパソコンの方が自作するより高額になることが有り、20万円を超えるとほぼ確実、30万円以上は安さだけを求めるなら自作の方が1割以上安くなる事も有り。
境界線が有る理由を主に3つとすると、
- 企業が目標利益率を設定し販売
- 少数量では仕入原価率が上がる
- 少数販売パーツの保守在庫リスク
分かり難いので具体例にすると、利益率20%のパソコンの場合
- 原:8万円・・売:100,000円=利:2万円
- 原:20万円・・売:250,000円=利:5万円
率は同じでも差額は3万円となり、利益率の目標を機種別では無く一律にすると販売価格が上がるほど差額は開き目立つ事になるわけです。
仕入原価率はパーツの仕切(仕入)価格以外、送料も含めた全体の事。比較し易いよう、バルクのマザーボードを予算55万円で海外から仕入れたなら
- 5千円の商品x100枚+送料5万円=単価:5500円(内、送料500円)
- 2万円の商品x25枚+送料5万円=単価:22千円(内、送料2000円)
1枚あたりに掛かる送料以外に、100枚と25枚では数量が多いほど仕切価格は下がりましょう。
最後の保守在庫リスクは修理用に保管しておく部品の事で、メーカー側は修理に入ったPCに対してその都度発注しているわけでは無く、販売した台数の何割か分のパーツ在庫が必要。
保守在庫を販売数の1%とすると
- 1万台販売・・1%=100枚
- 100台販売・・1%=1枚
実際には1万台の販売に対して在庫100枚は多いかも知れず、100台に対して1枚は無いでしょう。というわけで、1万台なら1%を切り、100台なら1%超える事になり、保守費用を販売価格に引き当てたり。
もっと言えば、極端な例として2万円と7万円のグラボなら、2万円の物が1.5万円になる頃には7万円の物は4万円くらいまで値下がりするも珍しくは無し。高額パーツの方が額としても大きく、新製品で置き換えられると下がる価値も大。
8万円クラスのPCで使われるマザーボードが5千円、それが1万台販売された場合と、20万円クラスのPCのマザーが2万円で100台売れた場合を比較しており、高性能で高額な物ほど販売数量は落ちるもの。
全てが上記にあてはまるわけでは無く、主にケース、電源、CPU、マザー、グラボの事。汎用性の高いHDD、メモリ、光学ドライブは別。
高額(高性能)になるほどメーカーが利益額をしなければならない理由が仕入や保守に関わるわけです。
これ以外にも原因は有るかも知れないけれど、修理現場に居た関係で在庫や仕入の担当とも繋がりが有っただけで他は知らない。
以上、余談終わり。
マウスコンピューターよりメモリ64GB搭載のゲームPC
なぜ64GBも要るのかは使途不明なので今回は置いておき、とにかく64GBもメモリを搭載したパソコンをマウスが発売。
画像を貼っても意味が薄いけれどイメージとして一応。
型番は「NEXTGEAR i830GA1-SP」、2種類発売された内の下位モデル。上位はSLI(NVIDIAグラボ2枚挿し)な変態構成なので見なかった事にしましょう。
主な仕様を引かせてもらいます。
- OS:Windows7 Professional 64ビット
- CPU:Core i7-3820(3.60-3.80GHz、4コア/HT対応、10MB)
- マザー:インテル X79 Expressチップセット
- メモリ:64GB(8GBx8、PC3-10600 DDR3)
- グラボ:GeForce GTX580(1536MB)
- HDD:1TB(SATA3、7200rpm)
- DVD:スーパーマルチドライブ
- 電源:700W(80PLUS GOLD)
- ケース:ミドルタワー
- その他:カードリーダー、キーボード、マウス
上から行くと、Windows7のProfessionaは機能以外に先日までサポートがやたら長いという利点が有ったもののVistaと同時に7もサポート延長されたのでHome~と比較し価値がやや下がった印象。なぜHome~では無いかはメモリが16GBを超えているのでHome~では認識しない為に1ランクアップ。
CPUは2月に発売されたLGA2011では現在最も安いCore i7 3820が標準搭載。安いとは言えLGA1156の最上位と同程度の高性能CPU。マザーはX79なのでメモリスロットが8本有り、マウスのマザーでは最大64GBまで搭載可能。
グラボのGTX580はOC版を除きGeForceシリーズでは上から2番目の高性能ビデオカードで、現在最上位のGTX590は価格が2倍近くなるのでマウスはやらなかったのかと。
HDD1TB、スーパーマルチ、その他(キーボードなど)は普通。キーボードはマウスのオリジナルらしいけれど詳細不明なのでスルー。
700W電源が80PLUSのGOLDになっておりますが、過去の製品を見るに大量に仕入れているのでしょう。マウスの高性能PCでは珍しくは無し。ケースはオリジナルらしく不明。
特徴はメモリを現行PCで可能な最大の64GBまで載せての宣伝で実用性は今の所少ないでしょう。そして、CPUやグラボを見るとなぜ19万円も行くのかピンと来ず。
という事は自作パーツの方が安いのだろうとし仮想見積。
「NEXTGEAR i830GA1-SP」同等性能を市販パーツで見積
価格コム最安より、2012年3月上旬の単品パーツの最安で値付。
ケースやメモリ、HDDなど特定出来ない物は同等品の最安相場おおよそとして。金額の「約」は省略。
- OS:Windows7 Professional 64ビット・・15千円 ※DSP版換算
- CPU:Core i7-3820(3.60-3.80GHz)・・25千円 ※BOX換算
- マザー:インテル X79 Express・・19千円
- メモリ:8GBx8(PC3-10600 DDR3)・・32千円
- グラボ:GeForce GTX580(1536MB)・・36千円
- HDD:1TB(SATA3、7200rpm)・・8千円
- DVD:スーパーマルチドライブ・・2千円
- 電源:750W(80PLUS GOLD)・・10千円
- ケース:ミドルタワー・・10千円
- その他:カードリーダー、キーボード、マウス・・計3千円
<自作構成A>
合計16万円。
マウスPCは19万円なので3万円高額。電源は700Wより750Wの方が安い物が有ったというだけで深い意味はございません。
逆に予算19万円で自作PCを仮想見積もりしてみましょう。上記一覧から変更しないパーツは灰色へ変更。
- OS:Windows7 Professional 64ビット・・15千円
- CPU:Core i7-3820(3.60-3.80GHz)・・25千円
- マザー:インテル X79 Express・・20千円
- メモリ:8GBx8(PC3-12800 DDR3)・・46千円
- グラボ:GeForce GTX580(1536MB)・・40千円
- HDD:1TB(SATA3、7200rpm)・・9千円
- DVD:スーパーマルチドライブ・・2千円
- 電源:750W(80PLUS GOLD)・・14千円
- ケース:ミドルタワー・・16千円
- その他:カードリーダー、キーボード、マウス・・計3千円
<自作構成B>
合計を19万円になるよう変更。
見た目で変わっている箇所はメモリの転送速度が10600から12800になっているだけで他の文字は変わっておりません。
何を変更したのか、先に変更前の自作構成Aの中身から。
- マザー:GA-X79-UD3 [Rev.1.0](GIGABYTE)
- メモリ:GOC316GB1333C9DC [PC3-10660 8GB 2枚組]x4(ゲイル)
- グラボ:GTX 580 ZT-50101-10P [PCIExp 1.5GB](ZOTAC)
- HDD:WD10EARX [1TB SATA600](WESTERN DIGITAL)
- 電源:SST-ST75F-G(SILVERSTONE)
- ケース:Silencio 550 RC-550-KKN1-JP(クーラーマスター)
自作構成Bの内容はこちら。
- マザー:X79 Extreme4-M(ASRock)
- メモリ:CMX16GX3M2A1600C11 [PC3-12800 8GB 2枚組]x4(Corsair)
- グラボ:GV-N580UD-15I [PCIExp 1.5GB](GIGABYTE)
- HDD:HDS721010DLE630 [1TB SATA600 7200](HGST)
- 電源:帝力 SPTR-750P(サイズ)
- ケース:CC600TWM-WHT(Corsair)
この違いが判るのでしょうか。実は私も良く解らない。
理由は19万円という価格に合わせて組み合わせて行っただけで内容をほぼ見ていない為。明らかに違いが判る所はメモリがやや高性能、ケースが白で何か格好が良いという程度。
BTOパソコンを選ぼうとする人は自作PCを組立出来なかったり組合せや性能が分からない以外、上記したAとBの違いが解らない人用。
メモリの速度差は数値では2割の差では有りますが、12800になれど10600との体感で速くなったと判るとは思えず。HDDも回転数5千の可変から7200rpm固定になっているものの、こちらも普通は体感するには無理が有りましょう。
BTOと自作の違いは価格と性能と「機能のこだわり」
マウスコンピューターと言えば知名度が高く初心者ユーザが多い事から根拠無くメーカーが悪いと言われがちなブランド。
自作とどう違うのか、何が悪いのか答えられる人間は居らず、もし要るならその人はなぜ他人(企業)に任せて自作しなかったのか、という事になりましょう。
自作AはマウスPCの価格に勝つ為だけに最安を組み合わせた物。この自作Aが故障した際に「(組み立てた)俺が悪い」と言うつもりなら良いけれど、パーツのメーカーが悪いと言うなら自作はやめましょう。
パーツのメーカーにこだわったものが自作Bとすると、コルセア、ギガバイト、日立、サイズ、を選び故障した場合は誰のせいになるのか。パーツのメーカーが悪いと思うなら自分以外が全て悪いと思われパソコンは使わない方がよろしいかと。(ASRockは私の趣味なので無視で)
BTOメーカーやパーツのメーカーで選ぶ方法が悪いとは言わないけれど、それを基準に良し悪しを評価するのは意味が無い。
このレベルの高性能PCを作る自作ユーザはこんな事を考えているはず。
- 必要またはそれ以上の機能を盛ったパーツ
- 可能な限り高性能を維持出来る物
- 自分の趣味や好きなブランド
私が自作してしまった原因はマザーボードの機能で、ASRockのX58が最適と判断。CPUは用途から考えると無駄な程に高性能が良いとしてi7-950を搭載。ブランドのこだわりは無いけれどケースだけはどうしてもクーラーマスターが良かったという。
機能、性能、メーカーにこだわるほど自作はBTOより高くなるもの。特異で必要な機能が特に無く、性能も上を目指してはおらず、どうしても好きなパーツのメーカーが無ければ自作する必要は無いでしょう。
自作AはマウスPCより3万円安くなっておりますが、自作PCは全部セルフサービス、BTOパソコンはメーカーが修理を代行してくれる物。
交換作業を自分で出来る人は多く、パーツが一発で完全にぶっ壊れてくれるなら良いけれど、故障というものは完全に沈黙する以外「稀に」とか「時々」や「故障かどうか判らない」場合も有り。
自作PCのハードルの高さは組立や組合せ以上に故障時にどうするかの方で、作業や検証が楽しめないならやめておきましょう。
約1年前の記事では有りますが、までまだ文字を読めるならこちらの方が分り易いかも知れない。
高性能ではBTOパソコンが自作PCより高額になる例
https://bto-pc.jp/select/core-i7-990x-extreme-edition.html
私は文字読みや作文は昔から苦手なので読み返してはおらず。情報が古い場合は御容赦有れ。
話を最初に戻すと、12~17万円以上なら自作が安くなる可能性有りとしておりますが、量産系BTOメーカーで12万円を超えるPCは何かの専門用途で無ければ大抵はオーバースペックやコストパフォーマンスを無視しているので予算を抑えたいなら再検討を。
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