先週のニュースより、DELLがBTO(カスタムPC)をやめる宣言。
先日、納期の遅さ解消やカスタマイズの煩雑さを理由にDELLの特急便と称し、即納(完成品)PCを中小企業用で強化するような記事が有りました。採算合えばいずれは個人用も有り得るとして終わりましたが、何とカスタマイズをやめるそうな。
PC関係総合としては大した事でも無いかも知れませんが、BTOパソコン.jpと名乗るブログとしては超ビッグニュース。PC Watchの会見まとめが上手い為、そちらより引かせてもらいます。
【PC Watch】 デル、BTO中心の製品提供形態から脱皮
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100929_396771.html
Dell日本法人の社長、ジム・メリット氏の解説より。私の説明や考え方が不要なら本文を読んだ方が全部判るためPC Watchをどうぞ。
世界的なBTOパソコンの老舗「Dell」がBTOをやめる宣言
大袈裟な見出しですが、パソコンのBuild To Order(受注後生産)を始めた張本人がBTOパソコンをやらないという事でハデに。
以下本文より引かせてもらいます。
デルモデルの特徴となっていた「BTO」によるカスタマイズ中心の提供手法から、スペックを固定したモデルを中心とした展開へと転換する姿勢を明確に示した
どの程度明確に示したかは本文に有り、カスタマイズにより複雑なパーツの組合せが求められていないとして完成品に方針を変えるという事。
PC Watch本文ではDellでのパーツの組合せは何百万通りと有りますが、ドスパラやパソコン工房などでは更に多く、サイコムやタケオネ辺りでは数千万通りになるでしょう。多さに意味は無いものの、BTOパソコンとはそれほど複雑になる可能性として。
これまでは何百万通りもあった製品構成内容を、99%以上削減する
99%が現在のBTOパソコンのカスタマイズ部分か、または全製品の比率としてBTOが1%以下かは不明ですが、残りの1%をカスタマイズとするなら。
- 保証の期間、センドバック、オンサイト(出張)が選べる
さすがに保証のみという事は無く、保証はカスタマイズなのかという疑問も有りますが、一度書いて削って行くとこれのみに。消した内容は以下。
- デスクトップならケース、ノートなら天板の色
- OS(今ならWindows7)のエディション
- マイクロソフトオフィスの有無、エディション
色が選べるという事は、製造の段階でデスクトップなら面板などを付けられず、完成品では無いカスタマイズ。これをやるなら即納の意味無し。ノートで天板の色が選べる事は、ベアボーン(ノート本体)製造の段階で既に色が付く為カスタマイズでは無し。
OSも簡単に選べそうですが生産工程の一部となり、インストール後の出荷チェックをするくらいなら今までと同様に時間や手間が掛かります。
オフィスもただ付けているのみでは無く、Dellに限らずオフィス付きを選択するとナショナルブランドのように工場出荷時からオフィスがインストールされている状態となり、単にMSオフィスのメディアを外から追加するわけでは無いため、これも難しい。
BTOパソコンそのものを1%未満とし、完成品の即納PCが99%以上になる「比率」という意味なら、Dellの通販からはカスタマイズPCが消えてBTOは小さく別メニューになると考えられます。
素直に読むなら「製品構成内容を」と有るため前者でしょうな。カスタマイズしない(出来ない)なら標準構成の状態でカートへ入れるのみ。
今やモビリティ、仮想化、ユビキタスといったものが強く求められており、それに向けてデルは取り組んでいく
横文字を日本語にすると、移動性、仮想化、意識せず便利な事、が求められているそうな。仮想化が何を指しているかは不明。前の行で「バーチャル時代を迎えた」とはクラウドの事でしょうか。
カスタマイズするモデルからの脱皮もその1つ。また、グローバルでは、サービスを強化したのが最大の変化であり、(中略) 箱売りのベンダーから、ソリューションベンダーへの脱皮を進め ているところ
お前はルー大柴かと。
強引に日本語訳すると、構成変更出来る機種を脱皮し国際的に役務を強化。箱売りする製造屋から仕組の設計屋へ変化する。
やや無理が有りました。
ソリューションベンダーとはシステム設計屋のような意味です。
現在、売上高の80%が法人部門からのものである
Dellは法人メインと思っていたものの8割とは驚き。
HPも日本ではサーバー関係で有名ですが、DellもNECや富士通に続き国内では3位のPCメーカー。いずれも法人で幅を利かせているのでしょう。関係無いけれど4位の東芝が良く判らない。
中国・成都に新たな生産拠点を稼働させたことを発表したことにも触れ、「今後は中国西部の開拓が進む」とした
成都(せいと)とは何処かは三国志でいう蜀の中心やや右上。
現在の四川省、中国の西部と有りますが中央よりやや左。もちろん海は無く完全に空輸体制で行くのでしょう。
結構長くなったものの、ここまででPC Watch本文の2割程度。さすがに夜が明けては困るため、要点を書き出して参ります。難しい所はグレーアウト。
- Dell日本のみで売上30億ドル(約2700億円)、従業員1,600人以上
- 営業は、川崎、宮崎、大阪、東京の4拠点でサポート(おそらく法人)
- 2010年の法人はPCとソリューションがほぼ半分ずつ
- 大企業はソリューション売上比47%、今年55%まで拡大、将来的に70%へ
- ストレージビジネスではiSCSI市場において43%のシェアを獲得
- ヤマダ電機との提携開始による新たな小売店展開を強化継続中
- 直販のバックボーンを強化したことによる翌日発送モデルが確立
- 低コストで短納期を求めるユーザへフォーカスを高めて行く
- 日本の法人向けオンライン経由の販売比率は28.1%に上昇
ドスパラの10倍とまでは行かないもののBTOメーカーとしては国内でも桁違いの売上高。MCJ全体では不明ですが、マウスとユニットコム(パソコン工房、Faith、TWOTOP)を合わせても30億ドルは行かないでしょう。
しかし法人が約80%とするなら個人は約6億ドル(540億円、90円換算)となり、ドスパラよりやや大きめ程度。
これまたドスパラはサードウェーブ全体なので単純に比較は出来ないけれど、ドスパラの悪評が多くなりつつ有る事に納得。PCメーカーが悪いという初心者の愚痴の数は売上に比例しています。
話を戻し、Dellは営業拠点が少ない事から、全国各地に外注(アウトソース)が有ると思われ伸び続けるという事は企業側も不満は無いのでしょう。
ヤマダ電機との提携は聞いた事が有るものの、店頭でカスタマイズをしている様子は無し。さすがに子会社のフロンティアが有るため出来ないと見ます。現在はDellでBTOやっているなら失礼、情報不足。
翌日発送は冒頭のリンクに有る、中小企業向け(但し従業員数500人以下)のデル特急便を開始しており、今回の発表で上手く行っている事が判ります。納期短縮も同様に課題となっていた事。
ラストの9は、法人売上のオフライン(直接販売)では無いオンライン(インターネット経由)が3割近くまで行っているという意味で、逆に7割以上がオフラインという事に驚きました。
さて、ここで気付いてどうしようか迷っていますが、先日のデル特急便は中小企業向け。要するに法人用なわけですが、今回のBTOカスタマイズ99%削減はもしかして法人のみで個人用PCは無関係なのではという事です。
ブログ始まって以来のピンチです。
PC Watchのタイトルに釣られた事も有りますが、他の個人ブログで「DELLがBTOをやめる」というタイトルが続々と流れており乗ってしまったという。強引に話をすり替えます。
DellはBTOパソコンをやめるべきか否か?
2つの考え方が有り、一つはDell側として、もう一つは私ら消費者として。
この場合の消費者に例として私は含まれず、主にDellの知名度や安さに魅了されヒョイと買ってしまうパソコン初心者の事。
Buid To Order がデルを大企業にさせた経営方針
企業やパソコンとしてのデルというより、私が凄いと関心するデルは2007年にCEOとして復活したマイケル(Michael Dell)の事で、以前書評もどきを試した世界最速経営の秘密は過去何度もネタにするほど美味しい内容。
余談ですが、この本はパソコンやBTOとしてでは無く、物販など在庫を抱えてしまう商売を覆すような面白い内容で、Dellの歴史を交えて在庫をしない経営とはどういうものかを知れる良書です。Amazonで無くともGoogle検索でも良いので是非ご覧有れ。
だらだら書いてしまいそうなため予防として箇条書き。
- DellがIBM市場を崩して世界2位になった理由はBTO
- 病的な程に在庫をゼロにする方針で経営が大改善
- 株主重視>顧客満足>社員精鋭化、による成長
日本のパソコンの歴史で例えると1990年代のNEC暗黒時代が近い物が有り。更に以前、世界規模で売られていたIBMに対してDellが格安でPCを販売したそうな。
当時、IBMが70万円ならDellは40万円など。但しやりすぎて在庫が腐ってしまい経営が悪化。そこでBTOという、受注されたパソコンのみ製造するという完全先払い方式をとったわけです。そして現在に至ると。
今更成功したビジネスモデルを変更とは、株主にCEO保留された腹いせ。では無く、ソリューションという新しいやり方へ転換する事で時の流れに逆らわないとするなら上手いでしょうな。
DellのBTOパソコン成功は既に過去形かも知れず。
初心者用パソコンとしてDellはBTOをやめた方が良い
日本でも成功した個人向けのBTOパソコンとして、初心者用に今後はBTOなどやめて即納に切り替えた方が良かろうと。いう理由は。
- Dellユーザはカスタマイズを重視していない
- ハードウェア、パーツ交換など考えていない
- 情報収拾をせず、後で盛大にクレーマー化
3は今取って付けたいつものやつですが、Dellのカスタマイズで事足りてしまうような用途なら他のメーカーで完成品を購入しても問題無く、完成品を選んだ方が話が早いでしょう。
パーツ交換を考えていない、情報収集をしていないという理由は、DellのPCはCPUまで分解出来る作業手順書を公開しており、あれを見てパーツ交換前提は有り得ず。最近のモデルは知りません。
Dellは自社(専用下請)製造品の独自仕様や、ビスを減らし生産を早めメンテを楽にする為、プラスチックを押して行けば分解出来る構造になっております。
マザーボード不明は大手では良くある事ですが、増設や換装を考えると電源不明のワット数まで分からない状態は有り得ず。
初心者用の安いPCとして更に売りまくるため、法人用のDell特急便を個人に適用するなら分かりやすく、ナショナルブランドに混ざってしまえば激安感は激増するでしょう。
BTOパソコン終了の難点は値上げと陳腐化(まとめ)
なぜBTOパソコンが安いか、普通に考えると。
- WindowsがOEM、MSオフィスも安く仕入れる
- 部品はバルクの大人買い、ケースを自社製造
- CPUは特にインテル様の恩恵が有ると思われる(推測)
もう一つ、Dellで語るなら在庫という面でBTOは有利なわけです。
- 特にCPU、VGAが受注生産により在庫を高速回転し腐らせない
特にと付けた理由は、マザーやメモリなどは規格(ソケット、LGA)が変わらなければ腐らず、しかしCPUは突然価格改定として値下げや新製品放流。VGAも然りで下手に在庫をすると価値が急激に下がるわけです。これを陳腐化と言い、陳腐化が進行する前に売ってしまう。
完成品ではこれが効かず、先日書いた有名メーカーのノートが3ヶ月で激安のように次が出ると価値が下がるわけです。この場合は時期モデルが出る為の在庫処分ですが、パーツ単位でも同じ事。
例として、今Core i7の870を搭載しGTS450、メモリ4GB、HDD1TBで10万円、仮に原価7万円とします。
BTOならパーツ単位でばらけて売れる為良いものの、1万台作り置きして来年の新CPUが放流される頃に1千台残してしまうと、パーツの販売価格の値下がりは3~4ヶ月経てば軽く合計7万円を切り、売ると損をする。しかし放置するとと更に損をして最終的にゴミ仕様。経営でいうと現金が少なくなりキャッシュフロー悪化。
小売店へ卸し返品されないという条件なら良いものの、通販で本当に完成品を在庫するならかなり危険。計画というより予知能力が無ければ不可能に近いと言えましょう。
実現するには、販売価格を14万円に設定し3万円多めに利益を出して9000台売れば差益は2億7千万円。売れ残った在庫が1000台の原価7万なら単純に7千万円の在庫。先に購入したユーザ9000台分が、この場合では2億円を補償した事になるわけです。
2行にすると、どの程度売れ残るか最悪のラインを想定し、それを見越しての販売価格になるため、BTOパソコンよりは確実に高くなると言えると。
以上。
Dellが個人でもBTOパソコンを売り続けて1年くらい経過したら、忘れた頃にこの記事は自動的に消滅します。 注:しません
やっつけ三行w
DELL「オマイらよく聞け、なんかもうBTOやめることにするわ」
業界「ちょw、おまw、まじで!、これ結構ニュースじゃね?」
私「わりと、どうでも、いい」
これから初めてPCを購入しようと考えている人が"DELL"と言うメーカー名を聞いて「PCのメーカーでしょ」と大抵が知っている所からしても、もう"BTOメーカー"と言うより"ナショナルブランド"になった感じはある。このサイトの左側からも"DELL"の消える時は近いのかな…。
世界最速経営より口コミ評価の高い本を発見。古本なら400円程度。
Dellというより現金や在庫と格闘している経営者は必見 かも知れない。
私はまだ読んでおりません。
Amazon.co.jp: デルの革命 - 「ダイレクト」戦略で産業を変える
http://www.amazon.co.jp/dp/4532190118
> TakaQ さん
私らの場合そうなりますな。
Dellという選択肢は、安い・有名・カートに入れ易い、という三拍子にて初心者うけするメーカー。
時間有ればDellの個人用PCよりカスタマイズ御覧有れ。先ほど見た機種のみかも知れないけれど、OSと保証以外のカスタマイズがバッサリ無くなっておりました。
> BTO使用の十利須我里 さん
BTOという三文字とDELLという四文字で比較するとDELLの方が認識率は高そうですな。ナショナルブランドに混ざるは良いとしても、テレビでいうサムスン状態にならない事を祈ります。