久々にオフラインでPC購入相談。
面倒なので断ろうと思ったけれど、相談者(以下、K氏)はプロのクリエイターでテレビ局のCMや企業用看板、パンフレットのCG制作をされている自営業者。と聞いてしまったので、おかしな物を買わないようお節介して参りました。
需要は希少と思うので暇なら適当にお読み有れ。
以下、私がどのように判断しているか一例として参考になると幸い。
条件や現状
- 用途:1人事務所で業務用デザイン(3DのCGを動かしまくる仕事)
- 性能:Autodesk(Maya)、Adobe CS(Premier、After Effects)で高速処理
- 予算:200万円以内
桁を間違われておりコーヒーを吹きそうになったけれど、現在使用しているパソコン一式は3年リースで月4万円近く支払い、PC本体は3万円くらい。再リースして安く使っているが性能がソフトに追いつかないとの事。
リース満了時点でPC本体のみでさえ100万円くらい。当然、故障時の対応は無料なのでそれはそれで良いと思うと言うと、その保守会社は昨年倒産し、クレジット会社へ金だけ支払っているそうな。
単純になぜ200万も出せるのか聞くと、4~5年前で100万なら今は200万すると思ったそうな。また、今回の確定申告で黒字すぎたので、今期は設備投資したいとのご希望。
PCリースしてくれる近場をあたってみたけれどクリエイター用のような高性能PCが無いらしく、今回購入する流れとなり、私へ話が回って来たという。
3Dデザイン用PCとは
以前も紙デザインの入門用として予算を控えめに構成しておりますが、それでもようやく20万円を切れるほど。
なぜ高額になるかはOpen GLの処理速度を上げる用としてQuadroという専門用途なビデオカードが必要になる為。
特に3Dで動画、更にCMまで作ってしまうプロユースとなればCPU性能も高くなければ今後3年使うと考えると予算20万円では厳しい。
CPU性能とグラフィック性能は落とせない、しかし上げすぎても差額の価値は判り難く、無駄の無いカスタマイズが必要になるわけですな。
予算を30万円未満としてマウスコンピューターへ。
まじめにクリエイターPCを売っているのはマウスくらい
デザイン用グラフィックボード(以下、グラボ)のQuadroやFireProを搭載しているのはドスパラ、マウス、パソコン工房。
一応全部見たけれどマウスは新製品や機種が多いものの、ドスパラやパソコン工房は微妙に放置気味。
それがなぜまずいかは、価格改定せず放置しているなら当時の価格で販売している事になり割高なのでスルー。
元から需要が低く、特にグラフィックボードの在庫金額目減りの早さが怖い為か真面目にやる気がしないのでしょう。
分かり難いけれど、マウスのトップページよりデスクトップから「クリエイターモデル」へ行くとQuadro特集となっておりました。FireProは新製品が出ず時代遅れなのか。
画像の下部に表示されている事例とされるページへ行くと、マイコミのマウスコンピューター宣伝記事へジャンプ。
事例の株式会社ピクチャーエレメントは映画用、K氏の規模は小さいけれど扱うデザインは似ており結構参考になったのでいくつか引用。
大手のクリエイター向けワークステーションは高価なものが多いが、マウスコンピューターのクリエイターモデルの場合は、PCプラットホームがベースなので低価格。
ワークステーションと言えばCPUがXeon(ジーオン)でメモリにエラー訂正が付くとか、信頼性が高まり確かに凄いけれど価格も凄い事に。
それらの特徴や性能の差で数十万円積めるなら良いと思うけれど、今時そこまでする意味は薄いかと。
動画作成にはAdobe After Effectsを使うのですが、平行して3~4つの処理をできるのは大きな効果でした。1台で何役もこなしてくれたという感じです
K氏が「マジで?」と驚いていたので凄い事なのでしょう。私はCSシリーズは何もまともに使えないけれど、Adobe CSシリーズを使う人は確かに複数のソフトを並行利用しておられますな。
Web系なら、FireworksとPhotoshopとDreamweaverとFlash作るやつ(名前忘れた)を切り替えて作業していたりなど。
CGの作業というのは何回トライ&エラーができるかが鍵です。高速なマシンで締め切りまでにトライできる回数が増えたことで、クオリティを上げることができました
私がパソコンの性能を見る際に最も気にする事が作業効率。3時間の作業が2時間になればそれだけ空き時間が増え、別の事も出来る。事業なら経費削減または増収、もしくは余暇へ置き換えも。
事例では高速な処理により品質が上がった、深読みすると品質以外の付加価値として、取引先から企業としての信頼も高まる事になるでしょう。
ここから後は宣伝臭いのでスルー。
消去法で考えるQuadro搭載クリエイターBTO PC
マウスのQuadro特集より、性能と価格を上から見て行くと
- Xeon仕様(Quadro 600、4000、5000K から選択)
- Quadro 5000K搭載
- Quadro 4000搭載
- Quadro 2000D搭載
- Quadro 600搭載
最上位シリーズはワークステーション。しかし個人的に金がもったいないだけと思うのでスルー。
最下位のQuadro 600は入門用と思われ、稼ぎまくるプロの業務用PCで動画編集をやりまくるには厳しいでしょう。
残るは5000K、4000、2000D。予算から考えると4000が良さそう。
約26万か31.5万円。勝手に30万円と決めた予算については後ほど。
ベンチマークも参考に。
そして価格コムで最安相場を拝見。5000Kを1とした基準でコスパ計算。
- Quadro 5000K・・19.4万円(1.0)
- Quadro 4000・・7.8万円(0.4)
- Quadro 2000D・・4.7万円(0.24)
5000Kはやたら高い割に4000との性能差は+11%程度。予算が少ないなら2000Dでも良いけれど、プロユースなのでここは4000でしょう。事例紹介のピクチャーエレメントもこれ。
4000搭載の31.5万円モデルのカスタマイズを開き、ざーっと見ると削る事が出来る(性能を落とせる)箇所が少なかった為、26万円の「MDV-AQX9210SH4-WS」へ。
2013年現在、OSは必ず「Windows7 64bit」
8を選択する理由が全く無く、ソフトウェアや周辺機器の対応状況を予想すると7一択。Adobeの3D処理は64bitでしか動かないと以前学生用PCを調べた際に知っていたので32bitは無し。というか当然のようにマウスも64bitのみで出しております。
長期間利用を考えCPU性能は落とさない
自分用PCなら2万円近く値下がるのでCPU性能は1ランク落とすけれど、プロデザイナが毎日のように長時間使うPC。3年間は無改造前提なので標準構成にて。
別の理由としてPassMarkで結構スコア差が有った(i7-3930K=12,126、i7-3820=9,051)ので安全に。
SSDで罠が張られていたので変更
標準構成がサムスンの840無印(TLCで短寿命らしい)なので、問答無用でインテル様の御520シリーズへ変更。こちらを標準にして欲しい。
データの保存は次に出るHDDなのでSSDは作業用。進行中の仕事や作業用一時ファイル用として。
1ファイルあたりのサイズはどのくらい行くかと聞くも、複数の(プロジェクト?)ファイルになるので、フォルダは合計数GBとか普通と言われ120GBでは不安としております。
HDDはマウスがリビルドする前提でRAID1へ
RAID1はミラーリング(2台のHDDが同じデータ内容)になる仕様。要するに自動バックアップしているようなもの。但し驚くほど高額。
1台ぶっ壊れてリビルドする際、マウスが全消ししてくれるなら全く意味が無い為、もしそうならRAID無し2本にしてフリーソフトで差分バックアップを設定。
保証は当然ながらプラス2年で3年へ
このような高額な構成でも7350円で3年保証になるマウスは良心的なのか計算していないのか。
ちなみにドスパラなら3万円、パソコン工房は1.5万円くらい。
マウスはPC本体価格に関わらず一律なので、特に30万円近いような高級機になるなら割安。クリエイターモデルに限らず、15万円を超えるなら強く推奨。
そして1,770円オーバーしRAID1を諦める
ここまでは私が最初にカスタマイズした流れの通り。合計は以下。
送料を抜くと309,120円。延長保証を抜くと301,770円。
30万円を超えてしまったので、2TBx2のRAID1を諦めてHDD 3TBの2台へ変更。SSDは起動ドライブとして残っており3ストレージ構成。
やり直した結果、送料3,150円、保証7,350円、本体286,230円。
自分で部品交換出来るならHDDは標準の2TBx1本として市販HDDを買えば良いけれど、保証は外せない。
不具合時に毎回呼ばれるのは嫌な事もあるけれど、業務用で毎日10時間以上使うとするなら、グラボが3年持つ確率が高いとは思えないので保険として。
30万円以下でデザイン用BTOパソコンをカスタマイズ(まとめ)
当初の予算は200万円。K氏がPC購入の相場を知らず、だいたいこのくらいと思い込まれていた為。
今回私がRAID1を諦めてでもPC本体を30万円未満に抑えた理由は、減価償却の特例措置というやつで、通常は10万円以上のところが現在は30万円になっているので気にしております。
具体的かつ簡単に言うと、29万円なら本年度の経費として29万円になるところ、31万円なら3年償却とすると、年間約10万円の経費にしかできない。
自営クリエイターという職種は安定しているとは思えず、早く高額な設備投資をして黒字決算分の税金を返してもらうなら、今回のQuadro 4000が最適だったという。
ちなみに送料は荷造運賃など、延長保証は前払費用(2、3年後の保証代の為)になりので別勘定。予算30万はPC本体の価格が30万円を切るという意味。
また、200万円も予算が有るなら今回の約30万円PCを試しつつ、それでも手が足りないなら人を雇っても良いでしょう。
仮に今年また黒字になりすぎるなら、来年以降に人を雇うとか。その頃にはまた新しいCPUやQuadroが出ているかも知れず、事業主または職場のエースが常に最高速を保てる。
30万円もするパソコンを購入するのは個人事業や中小企業が多いとするなら、売る側はここまで考えて提案しても良いと思う。
299,980円で「節税モデル」とか面白いかも知れない。おそらく私が面白がっているだけで、元の需要が低すぎ販促にはならないでしょうな。
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